研究課題/領域番号 |
16K16185
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
國分 亙彦 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (90580324)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動物装着型小型記録計 / 南極 / フィールド調査 |
研究実績の概要 |
南極沿岸域の飛翔性・潜水性鳥類の渡り行動と越冬生態を明らかにすることを目的に、南極宗谷海岸露岩域で繁殖するユキドリとアデリーペンギンを一時捕獲し、ジオロケータ(一年間の移動軌跡と潜水行動を記録する機器)を装着した。これらの個体は来繁殖シーズンに再捕獲し、ジオロケータを回収してデータをダウンロードする予定である。また、ユキドリについては、宗谷海岸露岩域においてこれまで営巣数が系統的に調べられたことがなかったことから、雪鳥沢流域を中心に営巣数調査をおこなった。 2016年12月24日から2017年1月31日にかけて、宗谷海岸ラングホブデの袋浦の調査地に滞在し、育雛中のアデリーペンギン20羽にジオロケータを装着した。また、2017年1月12日から1月16日にかけてラングホブデ雪鳥沢に滞在し、抱卵中のユキドリ10羽にジオロケータを装着した。これらの個体は2017年11月以降に営巣地を訪れて、繁殖のため帰ってきた個体を再捕獲してジオロケータを回収し、データ解析を行なう予定である。 さらに2017年2月4日から2月7日にかけて雪鳥沢に滞在し、雪鳥沢流域でユキドリの営巣数調査をおこなった。50m×50mの調査プロットを15地点設定し、その範囲内を精査してユキドリの巣の数をカウントするとともに発見した巣の位置をハンディGPSで記録した。また歩行途中にユキドリの巣を発見した場合も、その位置を記録した。この営巣数調査をもとに、今後宗谷海岸露岩域の地形の特徴に基づいたユキドリの営巣数を推定計算する予定である。 なお、アデリーペンギンとユキドリのフィールド調査準備のため、2016年8月21日から26日マレーシアで開催されたSCAR 2016 open science conferenceに参加し、各国で実施されている南極のペンギンや飛翔性鳥類の調査についての情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当研究の初年度であり、動物の行動データを取得するための準備に専念した。これまで、日本の南極観測隊で調査実績のなかったユキドリの調査を含め、事前に予定していた数のジオロケータをユキドリ、アデリーペンギンに装着することができた。さらに個体数調査も進めることができた。これらのジオロケータを次年度に回収し、データを分析すれば、南極沿岸域の飛翔性・潜水性鳥類の渡りや越冬生態の解明に大きく役立つと期待できる。よって今年度の調査終了時点での研究課題の進捗状況を「おおむね順調に進展」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当面の目標は、2017年11月(南極の春期)から、前年度に取り付けたジオロケータを回収することである。ジオロケータの回収なくしては行動データが手に入らないし、その後の解析もできないことから、前年度にマッピングした巣の位置などを手掛かりに、慎重に同じ個体を探し、再捕獲する。ジオロケータの回収時には血液と羽毛を少量採取し、昭和基地へ持ち帰り、低温で保存する。 これと並行して、ユキドリにはつがい形成後の産卵前採餌回遊に向かう10個体の、背中にGPSロガー(CatTraQ, Mobile Action Tech)、足にジオロケータ(Mk 4)を同時に取り付け、1分毎の位置と着水記録を得る。さらにアデリーペンギンには産卵後の採餌回遊に向かう10個体の、背中にGPSロガー(Cat TraQ)、頭に加速度-深度-温度計(Axy-Depth, TechnoSmart)を同時に取り付け、1分毎の位置と連続的な潜水深度、頭の加速度を得る。 さらに、越冬期間中および春期の海氷分布状況を、衛星データ解析によって調べる予定である。 これらのデータをもとに、これまで得られなかった、南極沿岸域における飛翔性と潜水性鳥類の越冬期間中および春期の行動を解析し、どのような環境パラメータがかれらの生態にとって重要なのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品として購入を予定していたジオロケータや加速度記録計は、外国の会社によって製造販売されているものであり、当初見込んでいた購入額から為替相場の変動によって差額が生じた。このため、物品費・その他の項目に残額が生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に発生した物品費・その他の項目の残額は、平成29年度、データロガー用の電池といった消耗品を購入するために使用する計画である。
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