研究課題
2017年10月から2018年1月にかけて、南極宗谷海岸のラングホブデを訪れ、前シーズンにユキドリに取り付けたジオロケータのうち、53%を回収した。また、同じく前シーズンにアデリーペンギンに取り付けたジオロケータのうち、95%を回収した。回収時には血液と羽毛を少量ずつ採取した。回収したジオロケータからは、いずれもデータをダウンロードし、電子データとしてハードディスクに保存した。2017年11月には、ユキドリ8個体に短期装着用のGPSロガーを装着したものの、海氷状況の悪化のために、12月初旬から下旬の、回収予定時期に調査地に行くことができず、これらのロガーの回収は断念した。また、調査地近くの昭和基地では、目視による生物の出現記録を続け、ユキドリ、アデリーペンギンについて、2017年5月下旬から10月下旬の間、昭和基地周辺からいなくなっていることを明らかにした。さらに2018年2月上旬、ラングホブデ雪鳥沢付近でユキドリの営巣数調査をおこなった。50m×50mのプロットを設置し、その中の範囲内を精査してユキドリの巣をカウントするとともに、その位置をGPSで記録した。
2: おおむね順調に進展している
日本の南極観測隊では初となるユキドリの行動データを無事回収することができ、さらに栄養状態の指標となる血液・羽毛の採取にも成功した。アデリーペンギンのジオロケータについては、95%の個体を再捕獲するなど、予想以上の成果が得られた。その反面、ユキドリの短期装着型のGPSについては、1個体も回収ができないなど、予想外にデータが得られない一面もあったが、これは海氷状況の悪化という自然現象に起因しており、安全上仕方のないことだと考えられる。これらの状況を総合的に判断し、今年度の調査終了時点での研究課題の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
昭和基地での越冬観測を終え、2018年3月23日に帰国した。今後はユキドリ・アデリーペンギンから得られた冬期の行動データを解析するほか、血液と羽毛の安定同位体比を調べ、越冬期間中の栄養状態を明らかにする。これらの結果を論文にまとめ、また学会発表を行う予定である。
平成29年度は研究代表者が南極・昭和基地で越冬観測中であり、物品の購入や送付が不可能な状態であったため、物品・旅費等の経費を使用しなかった。これらの予算は次年度使用額として繰り越し、平成30年度の予算として使用する予定である。平成30年度には、29年度、越冬中のために行うことのできなかった血液・羽毛サンプル等の処理、学会発表等の目的で、残額を使用する予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Marine Ecology Progress Series
巻: 593 ページ: 195-208
https://doi.org/10.3354/meps12365