2019年度は、南極で取得してきた飛翔性海鳥(ユキドリとナンキョクオオトウゾクカモメ)の羽毛・血液の安定同位体分析、ストレスホルモン分析と、ジオロケータのデータ解析を進めた。羽毛・血液サンプルについては、アラスカ大学の研究協力者(Alexander Kitaysky教授)に分析を依頼した。海鳥類の栄養段階を推定するため、彼らの行動圏内で取得してきた餌サンプルの安定同位体比も分析した。ユキドリは、南大洋の中の個体の越冬海域の違いによって、利用する栄養段階や栄養ストレスが異なることがわかった。ナンキョクオオトウゾクカモメは北半球に渡って越冬し、そこではユキドリより高い栄養段階の食物を摂取していることがわかった。 ジオロケータのデータについては、データを展開して日長と日出没の記録を取り出し、同様のデータを解析した経験のあるオーストラリアの研究協力者に連絡をとり、現在解析を進めている。 また、これまでに南極で取得した夏期のアデリーペンギンの行動データの解析を進め、次のようなことを明らかにした。1)ペンギンが見知らぬ場所から、行動コストを最小にするようなルートを正確にたどって巣まで帰ってくること、2)隣接するコロニー間で餌を探す場所が分離しており、より小さなコロニーの個体はより大きなコロニーの採餌域を避けていること、3)夏の間の海氷が少なくなる年には、海氷による物理的制約が減ってペンギンが自由に泳ぎ回り、餌を採りに行くためにかける時間を少なくできて、それが高い繁殖成績に結びついていること。これらの結果は論文として国際誌に掲載された、もしくは掲載が決定した。
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