研究課題/領域番号 |
16K16187
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
山川 茜 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究員 (00720286)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大気中水銀 / 水銀同位体分析 / MC-ICP-MS / マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計 |
研究実績の概要 |
1. 大気中原子状水銀(GEM)の連続・自動捕集システムの開発 本研究は、沖縄県国頭郡にある国立環境研究所の辺戸大気観測ステーションで長期的に大気中水銀の捕集を行い、MC-ICP-MS(マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計)で水銀同位体分析を実施することで、発生源および動態解明を目的としている。水銀には7つの同位体があり、環境中で生じる反応プロセスによって同位体比が変動することで知られている。これまで辺戸で実施されている調査では、大気中原子状水銀(GEM)の短・中期変動が報告されていることから、大気中で生じる水銀の反応プロセスが追跡するためには、捕集時間を考慮する必要があった。また、これまで申請者が開発したGEM捕集システムはマニュアル方式であり、遠隔地での捕集に適していなかったため、自動切換弁を搭載した捕集システムを開発した。本システムは、捕集時間を可変式(1日、2日、3日、7日)とし、捕集ラインを8系統にすることで、8日から56日間のGEM連続捕集が可能となった。 2. 沖縄県国頭郡の辺戸大気観測ステーションでの長期的モニタリングの実施 1で開発したGEMの連続・自動捕集システムを辺戸大気観測ステーションに設置して定期的に捕集を行ったのち、国立環境研究所にて水銀同位体分析を実施した。その結果、12月から1月におけるGEMの水銀同位体比が、都市・工業地帯のものと類似していることが分かった。捕集期間についてNOAA Hysplit Back Trajectory(後方流跡線)解析を行ったところ、中国大陸から輸送された大気であった。12月から2月にかけて、中国では石炭等の使用量が増加する時期でもあることから、水銀同位体比の結果はこのような人為的影響を示している可能性がある。今後、人間活動や風向きの異なる時期についても調査を実施することで実態把握を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、平成28年度について「研究実績の概要」で記した二点を実施した。 「1. 大気中原子状水銀(GEM)の連続・自動捕集システムの開発」では、1週間から1ヶ月連続運転可能なシステムの構築を目標として開発に取り組んだ。GEMの捕集では金アマルガム法を採用し、日本インスツルメンツ社製の水銀捕集管を用い、大気捕集には柴田科学社製のエアーポンプを使用した。その際、本システムの精度管理として、GEMが破過することなく捕集管に吸着することを確認済みである。 「2. 沖縄県国頭郡の辺戸大気観測ステーションでの長期的モニタリングの実施」では、11月にGEM連続・自動捕集システムを設置し、12月より捕集を開始した。捕集時間は3日間に固定して24日間連続で捕集システムを稼働させ、毎月水銀捕集管の交換を実施した。 研究1年目として、研究目的を達成できたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は以下二点について研究を推進する。 1. 沖縄県国頭郡の辺戸大気観測ステーションでの長期的モニタリングの実施 昨年度に引き続き、4月から11月までの期間中、辺戸大気観測ステーションにてGEMの捕集を行う。沖縄県では、7月から10月にかけて台風が上陸することが推測されることより、この時期については捕集を停止する。 2. 水銀発生源とその周辺環境の水銀動態に関する調査 大気中水銀の発生源には、人為および自然由来がある。本研究では、人為発生源として廃棄物焼却施設の排ガス、自然発生源として火山ガスを捕集し、水銀同位体比を取得する。また、火山地帯では土壌を捕集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、旅費が予定より若干少なかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
この金額は、次年度のサンプリングのための旅費に使用することを計画している。
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