研究実績の概要 |
本研究は、森林火災から放出される固体球形有機物エアロゾル粒子(ターボール粒子)の分析方法開発及び、実際の観測で得られたターボールの解析を目標とした。分析方法では、ターボール粒子の揮発分析を開発し、ターボールが600℃でも揮発しない成分を残すことを発見した (Adachi et al., 2018, AST)。また、ターボールの森林火災中の存在量、光学特性をブラックカーボンと比較する手法で解明し、ターボールの質量割合が全体の30-40%、その屈折率が1.56-0.02iと特定した(Sedlacek et al., 2018, ACP)。そして、ターボールの生成メカニズムが、有機物が窒素と酸素との反応によって粘性が高くなり煙の中で時間とともに生成する新たなメカニズムを提唱した(Adachi et al., 2019, PNAS)。以上の成果は、これまで多くの謎が残されていたターボールの生成プロセスにまで踏み込むものであり、本科研費の目標は大いに達成した。加えて、これらの成果が世界的にも評価された結果、2019年の夏季に研究費を一年延長してNASA及びNOAA主導の森林火災航空機観測(FIREX-AQ)キャンペーンに参加する機会を得た。最終年度の観測では、それまでに得たデータをさらに多くの森林火災観測例に適応する機会であり、これまでの結果でも、上記で報告したターボールの特性は普遍的なものであることが確認されている。最終的に、本科研費では関連研究を行った共著論文を含めてPNAS, Nature Geoscience, Nature Communication, ACP, JGR, ASTなどの雑誌に10本の論文が謝辞付きで出版された。
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