研究課題/領域番号 |
16K16189
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
堀井 勇一 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質・環境放射能担当, 専門研究員 (30509534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シロキサン / 水環境 / 有機ケイ素 / パーソナルケア製品 / 東京湾流域 / PBT |
研究実績の概要 |
環境リスク評価の最優先化学物質として注目される揮発性環状メチルシロキサン及びその類縁化合物について、東京湾流域を対象とした水・底質等の水環境モニタリングを開始した。本年度は、荒川、隅田川、利根川水系を中心に39地点の水質モニタリング調査を実施した。流域における環状メチルシロキサン(3~6量体)の総濃度(範囲:3.8~1000ng/L、平均:210ng/L)は、同一地点で実施した過去の調査結果(2013年、2015年)と比較して経年変化は認められず、また、国外都市河川の濃度より若干高値であった。得られた水中濃度分布と水生生物に対する種の感受性分布の比較によるリスク評価を行った。 流域内におけるメチルシロキサン類の排出量推計に関連して、排出源の一つである一般廃棄物処理施設の調査を6月に実施し、パーソナルケア製品等含む不燃残渣(破砕物)から発生するガス中に含まれる対象物質の濃度を明らかにした。また、不燃残渣の埋立処理を想定した水溶出試験を実施することで、当該物質の浸出水への溶出量を推定した。 生分解試験の準備として、メチルシロキサン類の主要分解物と推定されるジメチルシランジオールの分析法を検討した。当該物質は、有機溶媒中であっても保存状態によっては重合が促進するといった不安定な性質を有することから、標準試薬の安定性試験を含めた分析法開発に取り組んだ。 これらの研究成果の一部は、国内外の学会で発表すると共に、雑誌論文として発表した。また、シリコーン工業会主催のワークショップ(関連する行政、産業、研究者向け)で招待講演を行うことで、研究成果を広く周知すると共に、当該会議では、国内外における関連研究の動向について情報収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流域における水質モニタリングを実施し、その濃度分布を明らかにした。得られた濃度分布を用いて、流域におけるリスク評価を実施した。底質等の個体試料については、当初予定していた環状及び鎖状メチルシロキサンに加え、新たにフェニル化、水素化、ビニル化のシロキサン類を含む計35種化合物の一斉分析法を個体環境試料に対して確立した。 環境試料中の全有機ケイ素成分を測定するため、ICP発光分光分析計を用いる方法を適用し、有機系試料を導入するための試料調整法(MIBK)及び機器分析条件を検討した。特に全有機ケイ素成分を導入するための抽出液の簡易クリーンアップが課題であったが、適量のグラファイトカーボンカートリッジを用いることで、追加の類縁物質も含めて、簡便かつ高回収の処理が可能であることを見出した。 メチルシロキサン類の主な分解物であるジメチルシランジオールの分析法を検討した。試薬の安定性試験を実施し、安定して保管できる溶媒や容器材質、保管期間を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立した一斉分析法を用いて、各環境媒体におけるシロキサン類の残留状況を調査する。また、同試料について、ICP発光分光分析計を用いる有機ケイ素分析を実施することで、環境中の全有機ケイ素の総量を推定する。メチルシロキサン類の主な分解物についても分析法の目途が立ったことから、メチルシロキサン類とその分解物も含めた解析が可能である。最終年度は、発生源試料に加えて、主な最終堆積場として考えられる底質について、ターゲット分析、全有機ケイ素成分分析、分解物分析を実施することで、流域内での有機ケイ素収支の解明を試みる。 欧米におけるシロキサン類研究は数多く存在するが、国内における環境情報は非常に限られる現状にある。シロキサン類の化学物質管理に関しては、化審法における監視化学物質への登録(2018年4月)やREACH規則における製品への使用規制(2020年施行)及び高懸念物質候補物質への追加検討がされるなど、大きな転換期を迎えている。今後、環境中濃度の推移や代替物質への使用の移行について注視が必要であり、本研究の推進により、類縁物質も含めた調査を実施することでこれらに資する。
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次年度使用額が生じた理由 |
流域モニタリングの試料分析に若干の遅延が生じており、必要消耗品等の購入を次年度に繰り越したため。
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