揮発性環状メチルシロキサン及びその類縁化合物について、東京湾流域を対象とした水・底質等の水環境モニタリング及びリスク評価を実施した。得られた濃度プロファイルに全有機ケイ素成分(TOSi)の情報を追加することで、人工化合物である有機シリコン化合物全体の環境排出量を推定した。 平成28年度は、環状メチルシロキサン(CMS、3~9量)及び鎖状メチルシロキサン(LMS、3~15量体)、さらにフェニル、水素、ビニル基等の修飾シロキサン類を含む計35種化合物について一斉分析法を確立した。東京湾流域を対象に下水処理施設及びシロキサン類排出量の情報を収集整理し、シロキサン類の河川への負荷量を推計した。 平成29年度は、荒川、隅田川、利根川水系を中心に39地点の水質モニタリング調査を実施した。流域におけるCMS(3~6量体)の総濃度(平均:210 ng/L)は、同一地点で実施した過去の調査結果と同レベルであり、経年変化は認められなかった。得られた水中濃度分布と水生生物に対する種の感受性分布の比較によるリスク評価を行った。また、ICP発光分光分析計を用いるTOSi分析条件を確立した。 平成30年度は、流域から採取した底質について、シロキサン類の蓄積状況を明らかにした。CMS及びLMSの総濃度は5.3~4120 ng/gであり、調査地点により大きな濃度差が確認された。定量対象のシロキサン類がTOSi濃度に占める割合は7.5~30%であり、底質中には約7割以上の未同定の有機ケイ素成分が存在する実態が初めて示された。これらの濃度分布から東京湾流域に位置する下水処理施設からのTOSi総排出量を推定した。 これらの研究成果は、研究実施期間中に国内外の学会(13件)、雑誌論文(5件)、書籍(1件)として発表した。また、シリコーン工業会主催のワークショップで招待講演を行うなど、研究成果を広く社会還元した。
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