妊娠16.5日目にγ線(2 Gy)を照射されたマウスオス胎仔の精巣において炎症が起きているかどうかを確かめるために炎症性サイトカインであるIL1βおよびIL6のmRNAを測定した。γ線照射から1日後の妊娠17.5日目では、同時期の非照射対照と比較して、IL1βのmRNA発現量は1.6倍に増加し、生後1日目・4日目には、IL1βおよびIL6のmRNA発現量はそれぞれ1.2-1.5倍および1.2-3.4倍となった。また生後1および4日目でのCaspase1のmRNA発現量は、1.6-2.0倍に増加した。 昨年度の検討により、妊娠16.5日目にマウスオス胎仔から回収した精巣の器官培養においてリポ多糖(LPS)を培養液中に添加して炎症を誘導すると、精巣発育に悪影響があった。次に、精巣器官培養開始時にDNA切断を誘起するブレオマイシンで精巣を処理したところ、精細管の輪郭が不明瞭になり精巣の発育が明らかに阻害された。 精巣器官培養はアガロースゲルなどの上で精巣片を培養するため、培養中の精巣片は中央部が盛り上がったドーム型となる。その結果、精巣片の中央部の発育が悪くなり、精巣器官培養後の生殖細胞生存性の評価が難しくなる。精巣片中央部の発育不良の原因は、精細管が重なり合うことで酸素不足になっているためだと考え、培養中の精巣片を上から押しつぶし、精細管の重なりを軽減した。精巣片の押しつぶしにカバーグラスを使用したところ、培養開始24時間で精細管の輪郭が不明瞭になった。精巣片の押しつぶしにガス透過フィルムを用いたところ、精巣片は順調に発育し、培養開始から4-6週間経過した後でも精巣片の広範囲にわたって明瞭な精細管が観察できた。また4週間培養した精巣片の組織切片では、精細管内に一次精母細胞が観察され、ガス透過フィルムで精巣片を押しつぶす方法でも精巣器官培養が可能であることが明らかとなった。
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