研究課題/領域番号 |
16K16192
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
折田 真紀子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (90737305)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射性物質 / 福島原発事故 / 食品 |
研究実績の概要 |
本申請の目的は、東京電力福島第一原子力発電所事故後、他の自治体に先がけて帰村した福島県双葉郡川内村において、役場、住民と連携して村内で採れた食材に含まれる放射性セシウム濃度を測定して、得られた結果を食品別、季節別、地域別にマッピングし、さらに預託実効線量を算出することである。 平成28年度は、同村において採取・生産された食品中の放射性セシウム濃度の測定及びデータの解析を行った。2016年1月から12月までに採取及び生産された2,329個の食材中の放射性セシウム濃度を、Nalシンチレーションサーベイメーターおよびゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。国の放射性セシウム濃度の基準値(100Bq/kg)を超えた検体は、野菜類で1,133検体中6検体(検出率0.5%)、山菜やきのこ類で751検体中403検体(53%)、果物類で187検体中12検体(6%)であった。各食品中の放射性セシウム濃度の中央値は、野菜類が50Bq/kg、山菜やきのこ類で170Bq/kg、果物類が70Bq/kgであった今回の調査の結果により、野菜類に比べて、山菜やきのこ類など野性の食材から高い頻度で放射性セシウムが検出されることが明らかとなった。食材によって放射性セシウムの検出率や濃度が異なっており、住民における「食の安全・安心」を担保するためにも継続的な環境放射能のモニタリングを行っていく必要があると考えられる。 今後は、さらに季節別、地域別に解析すると同時に、預託実効線量を算出し、結果をデータベース化することで、住民がそれらの情報にアクセスできるようにする。さらに、これらの調査を通じた、住民の放射線被ばくと健康影響に関するリスク認知の変化について評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
住民への説明会を行った後に、住民の協力の下で食材のサンプリングを行うことができている。今後経年的に放射性セシウム濃度を測定し、その結果を食品別、季節別、地域別に解析していく予定である。さらに、これらの調査を通じた、住民の放射線被ばくと健康影響に対するリスク認知の変化について評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引き続き、平成29年度は同様に食材のサンプリング、放射性セシウム濃度の測定を行い、預託実行線量を算出して得られた結果をデータベース化する。食材中の放射性セシウム濃度を網羅的、経年的に解析することにより、地域における食材中の放射性セシウム濃度の動向とそれによる預託実効線量を明らかにする。結果はこれまでと同様に住民が長崎大学・川内村復興推進拠点においてそれらの情報にアクセスできると同時に、適宜川内村の広報誌、および川内村役場のホームページに掲載する。 平成29年度に川内村住民の放射線被ばくと健康影響に対するリスク認知についてアンケート調査を行い、どのような変化があったのかについて評価を行う。これらの結果を論文にまとめて公表するのに加え、村内での説明会を開催して結果を報告するほか、福島県の担当各所と情報を共有していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
川内村役場と相談の上、住民への説明会の時期が次年度へと変更になったため、一部の旅費が次年度に必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
住民への研究説明会を実施する時の旅費として必要である。
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