研究課題
細胞内では、DNA複製中にRNA前駆体(リボヌクレオチド)が基質として取り込まれることがある。ゲノムに取り込まれたリボヌクレオチドは、適切に除去されなければ様々な細胞の異常を引き起こし、個体では深刻な神経変性疾患や発がんの引き金になると考えられる。本研究では、DNA中のリボヌクレオチドが引き起こすゲノム不安定化の分子機構を明らかにすることを目的とした。本年度は、DNA中のリボヌクレオチドが引き起こす突然変異の抑制に関与する因子として、ヌクレオチド除去修復因子XPAおよび損傷乗り越えDNAポリメラーゼPOLHを同定した。具体的には、XPAおよびPOLHを欠損したヒトBリンパ芽球細胞TK6において、リボヌクレオチドのモデル基質としてリボグアノシン(rG)およびその酸化体8-oxo-rGを部位特異的に含んだシャトルベクターを導入し、ベクター上に誘発された突然変異の頻度とスペクトラムを解析した。その結果、POLHならびにXPA欠損株の双方おいて、野生株と比べて8-oxo-rGが引き起こす突然変異頻度が有意に上昇し、特にPOLH欠損株では大きな欠失(large deletion)を伴う変異の割合が顕著に増加した。一方、どの細胞株においてもrGによる突然変異頻度に差は無かった。rGはリボヌクレオチド除去修復(RER)によって修復されるが、その損傷体である8-oxo-rGは試験管内でRERによって除去できないことを我々は明らかにしている(Sassa et al., J Biol Chem)。本年度の結果から、RERが修復できないような損傷に対して、ヌクレオチド除去修復ならびにPOLHが代替機構として突然変異の抑制に関与することが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 13910
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https://uralab.wordpress.com/2019/11/21/acem-jems-2019
http://www.bio.s.chiba-u.ac.jp/research.html#sassa201909
http://www.bio.s.chiba-u.ac.jp/research.html#sassa201908