研究課題/領域番号 |
16K16196
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
藤通 有希 一般財団法人電力中央研究所, 原子力技術研究所, 主任研究員 (80638023)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オルガノイド / 幹細胞競合 / 遺伝子組換え / 放射線 |
研究実績の概要 |
放射線の生物影響は、総線量が同じでも線量率が低くなると小さくなること(線量率効果)が知られており、そのメカニズムの1つが、正常細胞が損傷細胞を排除する「細胞競合」であるという仮説を立てている。これまで、変異細胞が正常細胞に囲まれた場合に変異細胞が排除されやすいことは報告されてきたが、主要な臓器の1つである腸管の幹細胞において放射線を被ばくして損傷した細胞と被ばくしていない細胞との間で細胞競合が生じるかどうかは報告されていない。そこで、本研究は、照射幹細胞と非照射幹細胞、または、遺伝子変異幹細胞と正常幹細胞それぞれを3次元培養(オルガノイドの形成)し、臓器と同様の構造をもつオルガノイドにおいて幹細胞競合が観察されるかどうかを評価することにより、線量率効果の生物学的側面について検討することを目的としている。そのために、H28年度に幹細胞競合を可視化・定量化する実験系を構築した。H29年度は、遺伝子変異オルガノイドの実験系の構築のための条件検討(H28~H29)、幹細胞競合の観察(H29)を計画した。 本年度は、昨年度に構築した幹細胞競合を可視化・定量化する実験系を用いて、照射幹細胞と非照射幹細胞を混合培養し、オルガノイド中の構成細胞を解析することにより、放射線によって誘発される幹細胞競合が生じうることを確かめた。また、がん化オルガノイド形成手法として、昨年度選定したCRISPR法の実施に向け、遺伝子組換えの条件決定及びベクター等の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
照射・非照射幹細胞における幹細胞競合については実験を完了し、成果を取りまとめた。がん化オルガノイドについては、腸管幹細胞等を用いた確認実験により遺伝子組換えが想定通りに行われていなかったことが判明したため、次年度に原因究明に取り組み、実験計画を着実に進めていく予定。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子組換え実験が予定通り進まなかった場合は、当所で保持している遺伝子組換えマウスの使用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)遺伝子変異オルガノイドに関する実験を段階的に進めているため、消耗品の購入もこれに合わせ一部にとどまったことから次年度使用額が発生した。
(使用計画)次年度の実験に必要な消耗品の購入に使用し、計画どおりに研究を進める予定である。
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