研究実績の概要 |
本研究は、思春期前の尿中フタル酸エステル類曝露が、その後の第二次性徴発来に与える影響を明らかにすることを目的とした。 平成30年度は、昨年度に引き続き7歳児より朝一番尿の回収および調査票を用いて12歳の第二次性徴の情報を回収した。7歳児の尿は1118名にキットを送付し、774名より回収(回収率69.2%)、12歳児の尿は348名に発送、質問票は1326名に発送し、それぞれ312名 (89.7%)、713名(53.8%)より回収した。これまでに第二次性徴の質問票の返送があった男児1305名のうち、陰毛が生え始めていたのは322名(24.7%)、声変り認められるのは304名(23.3%)、女児1222名のうち陰毛が生え始めていたのは668名(54.7%)、胸の膨みがみられるのは935名(76.5%)であった。 昨年度改変した分析条件で引き続きLC/MS/MSによる尿中フタル酸エステル類代謝物10化合物(MiBP, MnBP, MBzP, MEHP, MEOHP, MEHHP,MECPP, MiNP, OH-MiNP, cx-MiNP)の一斉分析を実施した。これらの検討により、検出限界0.06~1.0ng/mLでの分析が可能となった。本研究では、2012年から2017年に回収した7歳児の尿120検体を用いて尿中代謝物を測定した。分析対象の10化合物のうち、MnBP, MEOHP, MEHHP, MECPPは全ての児より検出され、最も高濃度であったのはMECPP (中央値: 41.6ng/mL),次いでMnBP (38.4ng/mL), MEHHP (27.8ng/mL) であった。DiNP代謝物のMiNP, cx-MiNP, OH-MiNP) は、0%、0.01%、27.3%の検出率であった。本研究対象者の尿中フタル酸代謝物濃度は過去の先行研究の濃度よりも同等かやや低めであった。
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