研究課題/領域番号 |
16K16201
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加藤 弘亮 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90732636)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原発事故 / 森林 / 放射性セシウム / 林内空間線量率 |
研究実績の概要 |
本年度は、福島県伊達郡川俣町山木屋地区のモデル調査森林において、森林内の放射性セシウムの分布・移行状況の調査と林内空間線量率の定期測定を実施した。それにより、原発事故から7年目の森林内の放射性セシウムの移行状況と林内空間線量率の変化傾向の実測データを取得した。昨年度にモデル調査森林で実施した、地上レーザー測量及び無人航空機を用いた航空写真測量データの解析を進め、森林樹冠構造のパラメータを算出した。一方で、林野庁の林内空間線量率の広域測定地点において、昨年度に引き続き本年度も林内空間線量率の再測定を実施した。 以上の取得データに基づいて、原発事故初期の林床における放射性セシウムの空間分布について樹冠構造との関係解析を行った。その結果、樹冠縁では放射性セシウムの存在量が多くなる傾向が確認され、大気から降下した放射性セシウムの樹冠遮断が林内空間線量率の空間偏在性に及ぼす影響が示唆された(結果Ⅰ)。広域測定地点で得られた林内空間線量率について、樹種ごとに林内空間線量率の低減傾向の解析を行った結果、いずれの樹種においても林内空間線量率の低減傾向は放射性セシウムの物理減衰を仮定した場合の低減速度と同程度であることが分かった(結果Ⅱ)。さらに、福島県内の森林における放射性セシウムの初期沈着量を推定するために、既存の航空機モニタリングデータを解析することにより初期沈着マップを作成した(結果Ⅲ)。 以上の結果について、平成29年9月15日に北海道大学で開催された原子力学会、平成29年10月28日に千葉県で開催された放射線影響学会、平成30年3月27日に高知大学で開催された日本森林学会において成果発表を行った。また、結果Ⅰ及び結果Ⅲについては、国際学会誌に原著論文として投稿し受理された。結果Ⅱについては、同じく国際学会誌に投稿し、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル調査森林における放射性セシウム移行状況の定期観測と、森林樹冠構造の把握のための測量調査が順調に進行している。また、林野庁の林内空間線量率の測定地点における再測定調査も予定通り完了しており、林内空間線量率の時間変化傾向を解析するためのデータが得られている。昨年度までの調査結果の一部は2本の国際学会誌に掲載が決定しており、研究成果の発表準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、モデル調査森林内の放射性セシウム移行状況と林内空間線量率の変化傾向のモニタリングを継続して行う。また、樹冠構造の測量結果に基づいて、林内の放射性セシウムの3次元分布と林内空間線量率の変化傾向の関係解析を実施する。さらに高沈着量地域(浪江町赤宇木地区付近を予定)に新たに調査を選定し、降雨や林床のリター層の含水率の変化が林内空間線量率の測定結果に及ぼす影響を評価する。 福島県内の広域測定地点での林内空間線量率の再測定調査を実施するとともに、モデル調査森林の調査から構築した線量予測モデルの精度及び汎用性の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額46,201円が発生した理由として、物品費(消耗品)として当該年度予算に計上し経理システムに登録したが、その後購入を取りやめた。しかし、経理システム上に登録された消耗品購入経費の抹消を怠り、当該年度予算の締め日まで認識されなかったため次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度使用額46,201円は、次年度分として請求した助成金と合わせて物品費(消耗品)の購入費用に充当する。
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