本年度では、堆積物微生物燃料電池(SMFC)による栄養塩溶出抑制ポテンシャルを明らかにする事を目的として、実汚染底質を用いて水温の変動によって生じる底質からの栄養塩溶出変化による影響の検討を行った。20℃以上では、安定した溶出抑制効果が得られており、全窒素では温度が高いほど溶出抑制効果が大きく、最大で20%程度抑制が可能であった。全リンおよびリン酸は、温度による溶出抑制効果への影響は観察されず、20℃以上では10%程度溶出抑制効果が観察された。一方で、10℃の低水温時では、SMFC非適用時でも溶出量が十分に低く、溶出抑制効果の検証が困難であったが、全リンおよびリン酸で溶出抑制効果が観察され、低水温時でも効果が得られることが明らかとなった。また、長期運転によるSMFCの溶出抑制効果の変化の検討も行った結果、長期運転時においても栄養塩溶出抑制効果は維持されることが示された。一方で電極間の回路接続が解消された場合には、徐々に栄養塩類の溶出量が増加していく傾向が見られ、SMFCの運転維持が栄養塩溶出抑制に必要であるといえた。 本研究を通して、SMFCによる栄養塩の再溶出抑制効果は、SMFCの発電性能に依存することが明らかとなった。また、日照条件は直接的にSMFCの溶出抑制効果に影響を及ぼさないことや、長期的な運転においてもSMFCの運転が維持されれば効果が継続することも明らかとなった。以上のことより、SMFCは実環境においても通年を通して底質改善を促進出来るとともに、特に夏場などの底質環境悪化時に高い栄養塩の溶出抑制を発揮することが可能であることが明らかとなった。
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