研究課題/領域番号 |
16K16207
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
水越 厚史 近畿大学, 医学部, 助教 (50520318)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ホルムアルデヒド / 大気化学反応 / QEESI |
研究実績の概要 |
本研究は、健康影響も考慮したプラスチックマテリアルリサイクル技術を確立することを目的としている。前年度は、実験室実験により、プラスチック溶融時に揮発性有機化合物、PM2.5、ホルムアルデヒドの発生が確認され、溶融時排ガスとオゾンとの反応により、ホルムアルデヒドの生成も示唆された。そこで本年度は、フィールドにおいて、溶融時等のリサイクル過程における発生物質への大気化学反応の寄与を明らかにすることを目標とし、実験で用いたモニター類により、屋外大気濃度のモニタリングを行った。その結果、一般環境において、春季(3月下旬)の1週間のホルムアルデヒド濃度は、夜間から朝方にかけて上昇し、逆転層の生成による滞留や一次排出の影響が考えられた。また、日中から夜間にかけての上昇も確認され、光化学反応による二次生成の影響が考えられた。この傾向をふまえ、リサイクル施設近辺においても同様に調査している。 また、化学物質の健康影響を評価するために、化学物質等への不耐性を評価できる問診票(QEESI)の有効性について検討した。北條らは、化学物質過敏症(MCS)患者のスクリーニングのための問診票として、本問診票を用いた疫学調査を2000年頃から現在まで複数回行っている。近年、日本人の急速なライフスタイルの変化に伴い、化学物質曝露状況も変化していると考えられ、これらの調査は、その曝露状況の変化やMCS患者の病態の変化の履歴を含む貴重なデータと考えられた。そこで、北條らと共同で、旧調査(1999-2003)と新調査(2012-2015)の結果を比較したところ、MCS患者の化学物質等に対する不耐性や日常生活への障害の増加が確認された。この傾向に基づき、MCS患者のスクリーニングための新カットオフ値を設定した。この新基準を用いることで、現状に適したMCS患者のスクリーニングが可能になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、フィールド調査を予定し、まず一般環境において、各種モニタリング装置を用いて、大気中濃度の挙動を把握し、その結果、大気化学反応に起因すると考えられる生成物(ホルムアルデヒド)の変動を確認した。リサイクル施設近辺での調査は、引き続き光化学反応が活発になる次年度の春季から夏季にかけて行い、一般環境との比較を行っていく予定である。一方、化学物質等の健康影響評価のための問診票として、QEESIの有効性が確かめられた。また、QEESIは、その他の環境因子を調査する問診票との類似性も確認されたことから、QEESIをベースとした問診票の拡充についても期待できると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当初の予定のとおり、プラスチック溶融時発生物質及び生成物質を処理するための技術として、湿式酸化促進法を用いて、除去の可能性について検証する。また、今年度までの経過に基づき、引き続きフィールドでの調査を行い、更に、調査方法を汎用的な方法として確立することを目指す。化学物質等の健康影響評価のための問診票(QEESI)については、更なる拡充に向け、新規項目等の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析装置が一部整い、人件費・謝金を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度の調査、実験の拡充のために使用する予定である。
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