研究課題/領域番号 |
16K16208
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
尾形 有香 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 特別研究員 (50714200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工湿地 / 廃棄物埋立地浸出水 / 有機態窒素 / 植物-微生物共生系 |
研究実績の概要 |
廃棄物埋立地浸出水の処理において、近年、有機態窒素の残存が指摘されはじめたが、その実態についてほとんど明らかとされていない。興味深いことに、筆者らは、これまでの検討において、人工湿地によって浸出水中の有機態窒素を除去できることを確認した。本研究は、廃棄物埋立地浸出水に含まれる有機態窒素の実態を把握するとともに、植物と微生物との共生関係に着目し、人工湿地による有機態窒素の除去メカニズムを解明することを目的とする。本年度は、実最終処分場の浸出水を対象とし、有機態窒素の特徴づけを行うとともに、人工湿地による有機態窒素の処理特性を明らかとした。また、人工湿地による有機態窒素除去のメカニズム解明のため、無菌植物体を用いて、植物体自身による有機態窒素の除去特性を検証した。 対象浸出水に含まれる窒素の大半は、有機態窒素として存在していた。浸出水中の有機態窒素の生分解性を調べるため、長期分解試験を実施したところ、有機態窒素の一部は硝酸態窒素へと変換されたが、100日後においても68%が残存しており、生分解性が低いことが確認された。また、浸出水中における有機態窒素は、3 kDa以下が5割以上を占め、0.45μm <、30 kDa - 0.45μm、3 kDa - 10 kDa、10 kDa - 30 kDaの順に分布していた。人工湿地による浸出水処理によって、有機態窒素は高効率 (70 - 80%) で除去されるとともに、分子量分布が変化することが確認された。無菌植物体を用いた浸出水試験系を構築し、無菌植物体による有機態窒素の除去特性を調べたところ、植物体自身による有機態窒素の除去は進行しないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画通りに、廃棄物埋立地浸出水に含まれる有機態窒素の特徴づけを行うとともに、人工湿地および植物体による有機態窒素の除去特性を明らかとした。 これまで、廃棄物埋立地浸出水中の有機態窒素の特徴に関する報告例は極めて少なく、本研究で明らかとした有機態窒素の生分解性および分子量分布は、埋立地浸出水の処理において、有用な基礎的知見であると考えられる。また、人工湿地による難分解性有機態窒素の除去メカニズムの一端を明らかとしたことは、新規の知見を付与するとともに、生態工学を利用した環境浄化法の向上に貢献するものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた成果を踏まえ、浸出水中の難分解性有機態窒素の除去に対する植物-微生物共生系の効果について検証を行う。また、有機態窒素の高効率除去が確認された人工湿地を対象とし、ろ材および根圏での微生物群集構造を明らかとする。昨年度および今年度に得られた成果を統合的に解析し、人工湿地による難分解性有機態窒素の除去メカニズムの解明を推進する。得られた成果は、国内外の学会にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、タイ王国の廃棄物埋立地浸出水を対象としているが、現地のカセサート大学の研究者らと、良好なネットワーク、協力体制を構築することができたため、調査および実験方法の効率化および出張期間、頻度の短縮ができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、昨年度に得られた成果を踏まえて、研究を発展させるため、主に、国内外の実廃棄物最終処分場における試料採取のための調査関連費および、実験に必要な消耗品等の物品や微生物解析に関わる機器を購入する予定である。
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