研究課題/領域番号 |
16K16209
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
見島 伊織 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (00411231)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 排水処理 / 浄化槽 / 栄養塩除去 / 電気化学処理 / 放射光解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、電解凝集法の一種である鉄電解法を用いた小規模排水処理におけるリン除去の安定化が目標である。電解により溶出した鉄は槽内で2価や3価の状態を取り得ることから、リン除去の安定化のためには鉄形態の情報取得が重要となる。本年度は、実際の浄化槽内の鉄の化学形態を明らかにするため放射光分析を応用した測定(XAFS:X-ray absorption fine structure)におけるスペクトルの高感度解析手法の確立を行うためいくつかの検討を行った。市販の標準物質や自家調製した標準物質を用い、XAFSスペクトルの特異性について検討した。両者のスペクトルには大きな相違があり、室内実験生成物のスペクトルを市販の標準物質でパターンフィッティングすることはできなかった。しかしながら、自家調製した標準試料のスペクトルにて高い整合性でフィッティングすることができた。標準試料の持つ固有のXAFSスペクトルが最も区別され、高感度に解析できるエネルギー領域についても明らかにした。これらの解析により、鉄形態解析が可能となり、得られた解析結果とリン除去との関係性の考察が可能となった。加えて、実際のリン除去型浄化槽の長期現場調査から得た試料についてもXAFS測定を進め、鉄形態解析を行った。現場調査については、市販の標準物質でフィッティングが可能であり、Fe3O4、αFe2O3、FePO4などの含有が示唆された。試料によってばらつきはあるものの、おおむねFePO4の割合が最も高く、2価鉄の割合は少なかった。このように、解析手法の条件検討や実際の測定および解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画である放射光分析の解析手法の確立については、自家調製した標準試料や市販の標準資料を用いたスペクトル解析を十分に行っている。これらの結果の検証のため、メスバウワー測定による解析も実施した。加えて、長期の現場調査から得た試料の放射光測定を進め、鉄形態解析を行っている。一部の検討は、平成29年度に引き続き行っていくものの、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
連続式の室内実験を実施し、リン除去効果を試験する。本実験で得られた鉄を含有する生成物を用いて回分試験を行い、リン除去の速度定数を求める。この時、平成28年度に求めた解析方法で鉄形態解析を行い、リン除去速度定数との関係を考察する。また、X線回折などの他の手法を用いて、鉄形態解析結果の検証を行う。別途、浄化槽、し尿処理場、下水処理場などの流入水および処理水を回分試験に供し、有機物の存在下においての鉄電解法によるリン除去の速度定数を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
立命館大学客員研究員として大学からの招聘にあわせて、立命館大学SRセンターで放射光測定を行うことができた。また、国際学会発表の旅費を当該大学の関連予算で執行できた。これらにより、主に旅費の使用が当所の計画よりも削減されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
連続式の室内実験を開始するための消耗品などの購入に充当予定である。
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