研究課題/領域番号 |
16K16213
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
久保 裕也 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (90604918)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 製鋼スラグ / 電気パルス粉砕 / 磁気分離 / 耐火物 / 資源化 / リン / マンガン |
研究実績の概要 |
鉄鋼産業の副産物である製鋼スラグには、リン、マンガン、金属鉄の細粒が豊富に含まれている。本研究では、製鋼スラグからこれらの成分を様々な資源(マルチ・リソース)として回収すると共に、スラグ排出量の大幅な削減を実現する高度資源化プロセスの開発を目指している。 製鋼スラグを構成するリン濃縮相、鉄マンガン酸化物相、金属鉄を相互に分離するため、電気パルス粉砕を用いた選択粉砕を試みた。製鋼スラグをサンプルとして各種条件で粉砕実験を行った。電気パルス粉砕は従来の粉砕法と比べ、各相の単独粒子が生成しやすい粉砕法であることが確認された。電圧、パルス照射回数の増加に伴って、微細化が進む傾向が見られた。電極間距離および粉砕重量が増加しても粉砕効率はほとんど低下しなかった。そのため、電気パルス粉砕法は大量処理を指向する操業に有利な方法であると考えられる。 申請者が従来用いていた磁気分離法で、粉砕したスラグの分離実験を行った。電気パルス粉砕法によって、各相の単体分離性が高まったにも関わらず、分離率に大きな改善は見られなかった。調査の結果、特に微粒子側で磁性の低下や凝集の増加により分離が阻害されていることが突き止められた。 製鋼スラグの研究の過程で、スラグと接触して用いられる炉の耐火物のリサイクルに関する研究を開始した。耐火物は表面がスラグで侵食されると廃棄されるが、表層部を選択的に除去できれば、侵食していない部分は高価な耐火物原料として活用できる。本研究で検討している電気パルス粉砕法と磁気分離法をそのまま応用できる課題と考え、同時に研究を進めた。その結果、本研究の手法により従来の手法より高い品位、高いエネルギー効率で廃棄耐火物のリサイクルを実現する可能性が示された。また、ここで得られた電気パルス粉砕挙動は、本題の製鋼スラグの粉砕挙動に対しても有益な情報を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、新しい粉砕法である電気パルス粉砕によって製鋼スラグの選択粉砕性が高まることが示された。また、本研究で対象としている製鋼スラグに加え、当初想定していなかった耐火物のリサイクルに対しても有効な手法であることが示され、研究成果としては当初の予定より挙がっていると言える。一方で、磁気分離法自体に大きな改善が必要であることが明らかになったため、予定より研究すべき項目が増加してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
磁気分離法の改善に注力し、電気パルス粉砕法の高い選択分離性の効果を明確に示す。また、これまでは従来の粉砕法と同様、微細化することを目指していたが、目的物の選択粉砕さえできれば分離には充分であるため、消費エネルギーが低い粉砕条件で検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現場のスラグを使用した実験が多く、合成スラグを作製するための消耗品である坩堝を予定より消費しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
合成スラグを用いた実験が本格化するため、坩堝の購入で使用する予定。
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