鉄鋼産業の副産物である製鋼スラグには、リン、マンガン、金属鉄の細粒が豊富に含まれている。本研究では、製鋼スラグからこれらの成分を様々な資源(マルチ・リソース)として回収すると共に、スラグ排出量の大幅な削減を実現する高度資源化プロセスの開発を目指した。 製鋼スラグを構成するリン濃縮相、鉄マンガン酸化物相、金属鉄を相互に分離するため、電気パルス粉砕を用いた選択粉砕を試みた。スラグの組成、電圧、極間距離などを変化させたが、パルス照射回数が増えると粉砕状況の明確な差異は確認されなかった。この結果は、粉砕量を増加させても粉砕効率が低下しないことを意味し、操業に有利な粉砕法であることを意味する。 反磁性のリン濃縮相と常磁性のマンガン鉄酸化物相を磁気分離によって分離するため、超伝導マグネット内にステンレスメッシュを配置した流通式の高勾配磁気分離を作製し、スラグ粉砕粒子の分離におよぼす粒度、流束、メッシュ径、磁場強度、流通回数などの影響を詳細に調査した。過度にメッシュが細かく、流束が遅い場合は凝集、巻き込みが大きく、分離には16メッシュ、流束30 cm/s程度が適していることが明らかになった。磁場強度を段階的に高め、複数回流通させることによって分離性が高くなった。また、後段ほど細かい粒子が捕捉され、粒径分離の可能性も示唆された。 交流のある研究者と共同で、高リン鉄鉱石からリンを分離する研究にも着手した。高リン鉄鉱石の弱還元生成物に含まれる構成相は、本研究系と酷似したリン濃縮相、酸化鉄相、金属鉄であるため、同実験手法で分離実験を行い、一定の効果を確認した。
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