研究課題/領域番号 |
16K16217
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
澤田 和子 北里大学, 医療衛生学部, 特別研究員 (00772485)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レチノイン酸受容体(RAR) / ヒトRAR / メダカRAR / RARアゴニスト / 河川 |
研究実績の概要 |
レチノイン酸(RA)受容体(RAR)は核内受容体の一つであり、all-trans RAの結合を介して、脊椎動物の多様な機能を制御している。一方で、シグナル伝達系の過剰な発現は、催奇形性作用をもたらすことがしわれており、外来のアゴニストによるシグナル伝達系のかく乱は様々な脊椎動物に重篤な健康影響をもたらす可能性がある。近年、北米や中国、日本の水環境中においてRARアゴニストによる汚染が確認されている。これら既往研究では、ヒトの受容体を用いた試験系により評価されており、RARアゴニストによる野生生物への影響を明らかにするためには、水環境汚染によって直接的な影響を受け易い水生生物の受容体を用いた検討が必要である。 本研究では、神奈川県下を流下する相模川水系を対象水域として、RARアゴニスト汚染の実態調査を実施した。その結果、ヒトやメダカのRARに対してアゴニスト活性を示す化学物質は、時期や場所、時間によらず、普遍的かつ広範に存在することが明らかとなった。また、概して時期や場所によらず、アゴニスト活性はメダカよりもヒトの受容体に高い結合性を示すことが明らかとなった。さらに、HPLCを用いて活性の高い地点の試料を分画し、各画分の活性を測定したところ、複数の画分から顕著な活性が確認され、主要なRARアゴニストが含まれる画分はヒトとメダカで同一であった。これらのことから、ヒトおよびメダカのRARに結合し得る化学物質は複数存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相模川水系において、活性ベースでのRARアゴニストによる水環境汚染の実態を把握することができた。さらに、比較的活性が高い地点から採取した試料において、主要なRARアゴニストの活性画分を特定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
RARアゴニストが含まれる画分を、MS分析に供して、化学構造の推定を試みる。 また、天然のリガンドおよびRA類や4-oxo-RA類について、ヒトおよびメダカのRARに対するアゴニスト活性の用量反応性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年11月開催の7th SETAC World Congressへの参加を予定していたが、2017年11月開催のSETXC North America 38th Annual Meetingに変更したため差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表を行う国際学会の変更以外は、当初の予定通り、適正な予算執行を進める予定である。
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