本研究では、レチノイン酸受容体(RAR)アゴニストによるヒトおよび水生生物に対する健康被害の可能性を適正に評価するために、課題I「ヒトおよびメダカの受容体を用いたRAR結合ベースでのRARアゴニストによる水環境汚染の実態把握」、課題II「各種レチノイドにおけるRARアゴニスト活性の評価」の2つの課題に取り組んだ。 平成29年度は課題I、課題IIに取り組んだ。課題I「ヒトおよびメダカの受容体を用いたRAR結合ベースでのレチノイン酸受容体アゴニストによる水環境汚染の実態把握」では、相模川水系において、採取した試料について、酵母two-hybrid法を用いたアゴニスト活性の測定およびLC/MSを用いたレチノイン酸類の測定を実施した。次に、活性の高い地点から試料を採取し、HPLCを用いた成分分画によって得られた各画分を酵母two-hybrid法に供してアゴニスト活性を測定し、活性画分を特定した。さらに主要なRARアゴニストの活性画分の精製を実施した。課題II「各種レチノイドにおけるRARアゴニスト活性の評価」では、酵母two-hybrid法を用いて、ヒトおよびメダカのRAR受容体に対するatRA、9cRA、13cRA、4-oxo-atRA、4-oxo-9cRA、4-oxo-13cRA、4-hydroxy-atRA、4-hydroxy-13cRA、atレチノール、atレチナールのアゴニスト活性の用量反応性を評価した。その結果を用いて、半影響濃度(EC50)の毒性評価指標値を推定した。さらに、RARの内因性リガンドであるatRAのEC50値と比較することにより、atRA等価係数を算出した。 また、本研究に関する成果の一部を、国内学会1件、国際学会1件の成果発表を行った。
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