研究実績の概要 |
本研究は、レジオネラ属菌の遺伝的群集構造を解析することで、ヒト生活環境中でニッチを獲得する機構を明らかにし、レジオネラの生存戦略の解明を目指す。これまでの研究から、L. pneumophilaにおいて、遺伝子型別解析(SBT, MLVA)から、冷却塔水由来には特徴的な三つのclonal complex(CCs; CC1, CC2, CC3)が定着していること、温泉環境においては多様な遺伝子型が存在し、L. pneumophila以外の特徴的な菌種が定着していることを明らかにした。本年度は、冷却塔由来の三つのCCを構成する代表株について、STの異なる株を追加し、昨年度までに得られたゲノムデータと合わせて計25株の詳細なコアゲノム解析を実施した。その結果、ゲノム系統でも大きく三つにクラスターが分かれ、STのグループを反映した。CC1とCC3にはそれぞれ2つずつサブクラスターが形成されており、サブクラスター内は極めて近縁であったが、サブクラスター間では同一CC(ST)内でもコアSNP数が数百を超えており多様性が見られた。近縁であった株同士は分離年・施設に関わらず近縁であった為、特定の遺伝系統が広く伝播している可能性が示唆された。CC2は他の二つのCCとは大きく離れており、L.pneumophila subsp. fraseriのゲノムと同一クラスターに存在することが明らかとなった。また、同一施設においては、経年的に分離された株が別のサブクラスターまたは別のCCに分類されることが見出されており、冷却塔においては、特定の限られた遺伝系統のL.pneumophilaが共存している可能性が示唆された。
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