研究課題/領域番号 |
16K16228
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神名 麻智 広島大学, 工学研究院, 助教 (10619365)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオマス / バイオエタノール / 発酵 |
研究実績の概要 |
木質系バイオマスからバイオ燃料の一つであるエタノールの生産する工程において重要なステップに発酵がある.その発酵を高効率に行うには発酵工程に存在するあらゆる阻害影響に耐性の酵母を作出しなければならない.通常,木質系バイオマスからエタノールを生産する工程では,糖を生成しやすくするために各種前処理を施す.前処理の中でも水熱前処理は熱水で処理するためバイオマスが過分解し,各種発酵阻害物質が生成する.現在までの研究において各種発酵阻害物質が酵母の増殖および発酵に阻害的な影響を及ぼすことが明らかになっている.また,その他に酵母の阻害物質として挙げられるのが発酵工程で生成するエタノール及び熱である.酵母はグルコースから発酵によってエタノールと二酸化炭素を生成する.ある程度の濃度であれば,酵母は生成したエタノールに対し耐性機構を持つが,高濃度エタノール存在下では阻害を受け発酵効率が低下する.しかしながら,現在のバイオエタノール生産濃度は,蒸留前で15%程度以下にとどまっており,より高濃度でエタノール生産を行うことが高効率燃料生産の鍵となっている.高濃度発酵を目指すには,原料を高濃度にしなければならなく,それに伴い,先の各種物質も高濃度で存在することとなる. そこで本研究では,高効率エタノール生産を実現するため,高濃度エタノール耐性の酵母を作出し、尚且つ各種発酵阻害物質に耐性の酵母を作出することを目的とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに酵母の発酵効率に対し高濃度エタノール及び各種発酵阻害物質,発酵によって生じる発酵熱の阻害影響を確認している.さらにエタノール及び各種発酵阻害物質は濃度依存的に阻害影響を及ぼし,その阻害が起きはじめる濃度も明らかにしている.また発酵のみならず酵母の増殖に対するエタノールの阻害影響を解析したところ,酵母の増殖期および定常期の両方に影響を及ぼすことを明らかにした.加えて,先に述べたように酵母の発酵効率は発酵によって生成する発酵熱によっても阻害影響を受け,またその影響は高濃度エタノールの存在下で促進されることが示唆された.本課題で使用している酵母は最適温度が30度であり,高温で著しく発酵効率が低下するため,高温,且つ高濃度エタノール条件で発酵可能な酵母を作出する.
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今後の研究の推進方策 |
初年度では高濃度エタノールに対する酵母への影響を解析し,またその阻害影響は他の阻害物質である発酵阻害物質及び熱と複合的な影響を及ぼすことを明らかにした.またそれらは個々の阻害物質の濃度及び温度上昇の程度によって大きく影響が変動していることも明らかとした.実際のバイオ燃料生産のためのエタノール発酵槽では,それらの阻害物質が共存している.より現実的な影響を解析するために,今後も高濃度エタノールに対する耐性のみならず,各種発酵阻害物質及び熱の影響を考慮し,複合的な影響を解析することとする.まずは,耐性酵母を作出するための緒として,各種阻害物質存在下での細胞内活性酸素の生成量変化などの生理的な解析を行う.得られた知見から各種ストレスに共通の因子もしくは遺伝子を同定し,遺伝子改変を行うことによって各種ストレスに耐性の酵母を作出する.またそれと並行して各種阻害物質の影響を定量的に解析するために各種阻害影響を厳密に考慮した発酵の式を作成しモデル化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
阻害物質の影響を当初よりも詳細に解析する必要が出てきたため,阻害影響解析に焦点を置いた.次年度は生理的な解析を行うための各種試薬の購入に使用する計画である.
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次年度使用額の使用計画 |
先に挙げた解析に加え,研究成果を国際学会で発表する予定であり学会参加費に使用する計画である.
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