研究課題/領域番号 |
16K16239
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
関 耕平 島根大学, 法文学部, 准教授 (10403445)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人形峠 / ウラン残土 / 不法投棄 / 特定廃棄物 |
研究実績の概要 |
2017年度に予定していた研究概要は以下のとおりである。 1)不法投棄事案における撤去(香川県豊島、岐阜県椿洞など)までの過程との比較により、放射性廃棄物であるが故の人形峠における撤去までの経緯の特色・困難性を明らかにする。2)現状の放射性廃棄物、「特定廃棄物」をめぐる政策と地域紛争の状況・構図について整理する。3)1)の分析結果から、福島における放射性廃棄物の保管・処理・移動・撤去をめぐる政策的示唆を整理する。 このうち3)の福島における放射性廃棄物に関する地域紛争の実態を把握するため、連携研究者とともに双葉町における調査を実施し、中間貯蔵施設建設予定地とそれを取り巻く実態について把握した。さらに人形峠の実地調査と現地見学会の参加によりより実態把握を深めることができた。 また前年度に引き続き、今後の解明すべき論点を他研究者との議論や研究交流の中で検討することに力点を置いた。とくにウラン残土問題の概要について、今後の解明すべき論点についての意見交換を実施した。さらに所在を確認した資料について一部入手し分析を開始した。 とくに以下の四つの論点、①廃棄物の量と質,②汚染濃度や不確実性に対する各主体(住民、行政、企業〔動燃〕)の態度の違い,③費用負担額と負担主体、負担方法,④当該土地の所有形態(民有・公有)に着目し、念頭に置きながら双葉町における調査を実施した。 こうした今年度の調査及び研究は、福島県双葉町における中間貯蔵施設の建設をめぐる動向を注目しながら、人形峠の事例の政策的教訓を引き出すための分析、という、今後の研究の方向性に向け重要なステップであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウラン残土問題に関する、資料所在確認済の文献を一部入手・分析を開始した。 また、今後の解明すべき論点などについての検討も、他研究者との共同作業によって深められた。 一方、福島県双葉町における中間貯蔵施設の建設の経緯や状況の把握によって新たな論点や分析すべき事象が多くあり、人形峠の事例との比較検討についての論点を絞り切れない部分が多く、次年度以降に研究課題として残された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)18年にわたる人形峠ウラン残土問題の解決過程の全体像を明らかにし、行政、住民、責任企業といった各主体の動向といった詳細まで事実経過を再構成する。 (2)人形峠の事案との対比を図るため、不法投棄事案や廃棄物処理施設の建設・立地問題(NIMBY問題)の構図を一定事例を集めながらモデル化する。 (3)(1)および(2)の対比から、放射性廃棄物特有の解決の困難性について明確化する。 (4)(3)に基づき、福島の事態に対しての政策的示唆を析出する。 以上が今後の研究の方向性であるが、特に福島県双葉町における中間貯蔵施設の建設をめぐる動向を注目しながら、人形峠の事例の政策的教訓を引き出すための分析を引き続き実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力のアルバイト経費および調査出張が一部実施できなかったことによるものであり、全体の進捗とは無関係の繰り越しである。
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