研究課題/領域番号 |
16K16243
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
權 眞煥 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任研究員 (90772020)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コミュニケーション工学 / 身体同調 / 非言語コミュニケーション |
研究実績の概要 |
コミュニケーションとは複数の人間が感覚情報と身体動作を介して相互作用するプロセスである.ここで,相互作用の間「(ま)」は円滑な人間コミュニケーションを行うために非常に重要な役割を果たしている.特に,先行研究によると相互作用の特徴は個人間の身体動作の同調現象として現れる可能性が示唆されてきた. 本研究の目的はコミュニケーションにおける身体同調をリアルタイムに可視化できるシステムを構築することである.申請者はコミュニケーション時,身体動作の位相差により同調検出が可能になるアルゴリズムを考案してきた.このアルゴリズムにより身体同調を特徴付けることに成功し,身体同調の活動度と前後関係,強度をそれぞれ,位相差分布の密度と平均位相差,標準偏差と尖度により検証する手法を開拓した.この成果は,様々なコミュニケーション時の身体同調を客観的に可視化できる可能性を開くものである. 本研究では,考案したアルゴリズムを活用し,ウェブカメラを通して同調検出ができるシステムを二つのバージョンにわたり開発した.一つ目はカメラ1台で複数人の身体動作の位相情報を検出し,位相差計算により身体同調を可視化するシステムである.二つ目は遠隔状態を想定し,PC2台にそれぞれ接続されたカメラ2台から身体動作の位相差を検出し,同調を計算するシステムである.計測者はリアルタイムに身体動作の位相関係(加速度情報)を表示グラフにより確認することができる.なお,コミュニケーション終了後は同調の特徴が位相差分布のヒストグラムと3つの評価指標(身体同調の活動度と前後関係,強度)で可視化される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではKinectカメラを使用し,Kinectカメラから得られる加速度情報により位相差の計算を行う.加速度情報を検出する時間分解能は30fpsとして固定している.Kinectカメラを通して同調検出ができるシステムは二つのバージョンにわたり開発した.一つ目はカメラ1台から6人までの身体動作の位相情報を検出し,位相差計算により身体同調を可視化するシステムである.このバージョンのシステムはコミュニケーションを行う人の正面から側面(左右±90°)の角度まで位相情報を検出できる.二つ目は遠隔状態を想定したシステムである.PC2台を使用し,それぞれのPCにKinectカメラを接続し,2台のKinectカメラで身体同調を検出する.このバージョンのシステムは2台のPCをローカルネットワークで接続し,Kinectカメラから得られる加速度データを用いて身体動作の位相差を計算し,同調結果を出力する. 2種のシステムの実装は完了したが,今後精度評価を行う必要がある.予想される問題としては30fpsの時間分解能の影響である.つまり,30fpsの時間分解能が精度よく同調を検出するために十分なのかを検証する必要がある.また,最適に身体同調を検出するために,カメラからの角度,距離などを総合的に検討する.
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今後の研究の推進方策 |
現在PC1台とKinectカメラ1台で同調検出ができるシステムと遠隔状態を想定し,PC2台にそれぞれ接続されたKinectカメラ2台で同調検出ができるシステムの開発を行った.しかし,十分に同調検出ができているか精度評価を行う必要がある.一つ目は30fpsの時間分解能が同調検出に十分なのか検証する.そのため,100Hzの時間分解能を持つ加速度計を使用し,開発したシステムと同時計測を行う.得られた加速度データと同調の結果を比較し,精度評価を行う.また,最適に身体同調を検出するために,カメラからの角度,距離などを総合的に検討し,改善を進める.なお,得られた成果は論文執筆とともに汎用性を考慮したシステムへの展開を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はシステムの開発と有用性評価を計画している.システムの開発は完了したため,次年度は主にシステムの有用性評価と改善を行う.そのため,システムを使用した被験者実験と評価装置の購入を進める.
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