研究課題
本研究は、地域高齢者と生活習慣病外来に通院する高齢者の2つの集団を対象に、社会環境・生活因子に着目してフレイルおよび脳老化に影響する要因を明らか にし、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの二方向からの介護予防対策の方法を提示することを目指すものである。 平成30~現在は、高齢糖尿病患者を対象にフレイルおよび脳老化の進展評価を行うための調査を進めている。2013年に血糖管理や認知・バランス機能に関する調査が行われた糖尿病患者484名を対象に、2019年にフレイルや脳老化の進展評価のための調査を行った。調査協力者は298名であった。今年度は、脳老化の進展評価の一つとして、Mini Mental State Examination(以下MMSE)の6年間の推移を分析した。2013年及び2019年の両時点でMMSEの評価が可能であった282名を分析対象とした。MMSEで評価された6年後の認知機能の推移としては、2013年時点で正常域(MMSE>=28)であったもの202名のうち、軽度認知障害は50名(24.8%)、認知症疑いは5名(2.5%)を占め、約3割に6年間での認知機能低下または悪化を認めた。202名中の年齢階級別認知機能低下者(MMSE<28)は、65歳未満15名(15.8%)、65歳以上75歳未満24名(32.9%)、75歳以上16名(47.1%)で、性別による認知機能低下者は男性35名(25.5%)、女性20名(30.8%)であった。今後はMMSEで評価された認知機能低下者に影響する生活・環境因子の検討や脳画像所見を含めた脳老化進展評価を行っていく。
4: 遅れている
2019年12月末に、予定していた被験者への身体計測や認知機能テスト等の被験者へ接触して行う調査が終了した。その後診療録からの検査データの抽出や経過記録および検査所見の転記、解析可能なデータベースの構築、解析、論文化の予定であった。しかし、2020年2月末以後、COVID-19感染拡大防止の観点より臨床研究に伴う病院への入室が禁止され、現在診療録閲覧作業が中断している。
調査フィールドとしている病院のCOVID-19感染拡大防止の方針に従い、臨床研究伴う病院への入室が許可されたら診療録調査を再開し、解析可能なデータベース の構築を行う。入室禁止が解除されたら直ちに調査が開始できるよう、調査員はすでに確保しており、作業プロトコールも確立している。データベース構築後 は、生活習慣病を有する高齢者の脳老化の進展を抑制する因子を社会環境因子および生活因子に着眼し抽出していく。
調査未完遂に伴う、調査員への謝金及び成果報告のための学会参加費及び英文校正、論文投稿費を繰り越した。よって、COVID-19感染対策措置としての病院入室制限が緩和されたら、診療録調査を再開し、データベース構築を行う。その後、データ解析を行い学会発表及び論文投稿を行う計画である。
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