本研究は、Ethical Consumerをキーワードとして、東日本大震災による原発事故で影響を受けた食や住まいの選択を題材として研究を進めてきた。Ethical Consumerとは、倫理的意識の高い消費者とも訳されているが、原発事故後の食選択や住まいの選択について、家庭科ではどのように教育すべきかを再検討する必要がでてきた。 特に、教員を目指す若い学生たちが教員養成課程で震災や食・住まいの選択をどのように学ぶかに着目し、研究を進める中でデータを収集するなどして、教材を含め教育プログラムを検討した。 原発事故は今もなお進行する形で汚染物質の排出問題が山積しているが、離れた地域ではその諸問題が薄れがちであることも指摘できる。最終年度は、データ収集や教材になる素材を集めた教材を作成したうえで、その教材を使った授業を行い、その前後に学生らに調査を実施した。その授業で教材を使ったか使わなかったかで、どの程度の教育効果が見られたか、定着度が上がったかを検証した。教材の使い方の改善が反省点として若干は残るものの、「豊かな暮らし」とは何かを学生らが自ら考えることによって、倫理的な消費とは何かを考えて行動することができるようになっていた。離れた地域の現状を踏まえて消費生活を送ることの難しさを課題として捉え、日本国内の被災地だけでなく、遠く離れた諸外国での状況等も踏まえてEthical Consumerを育成していくためには、知識や認知的共感性はもちろんのこと、日常モラルの育成や情緒的共感性も育てていくことが大切であることが明らかになった。
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