本研究は、高齢者の居宅の温熱環境が健康指標に与える影響を検討するものである。特に睡眠に着目し研究課題を実施した。睡眠は食事や運動といった生活習慣と同様に、ひとが健康を維持するために重要な役割を果たす要因である。睡眠の量や質は寝室の環境をどう作るかということと関わりが大きい。質の高い睡眠の確保を可能にする温度や湿度などの環境づくりの要素を明らかにすることは、高齢者の日常生活におけるQOLの向上に寄与すると考えられる。 2017年度および2018年度に地域在住高齢者の寝室環境と睡眠との関係を広く把握するための郵送による質問紙調査を実施した。対象者は、地域在住高齢者長期縦断疫学研究(SONIC研究)において、兵庫県と東京都に居住する75-78歳911名,85-87歳492名であった.調査票はそれぞれ2017年9月および2019年2月に郵送で送付し,70歳群729名(回収率80.9%)および80歳群380名(回収率77.2%)から返送が得られた。調査内容は、寝室を中心とする居宅の環境調整の方法と環境への主観的評価、ピッツバーグ睡眠質問票日本版を含む睡眠の量や質、人生満足度、感情的well-being等であった。 一部のデータ分析の結果、①寝室においてエアコンやファンヒーターといった室内に気流を生じさせる機器で温熱環境を調整した場合、睡眠の質が有意に低いこと、②夜間頻尿が3回以上の場合は、0回、1-2回の場合より睡眠の質得点が有意に高く、年齢や日中の身体活動量に関わらず夜間頻尿の回数が多いほど睡眠の質が悪かった。 各年度の結果の一部は、対象者全員にフィードバックのリーフレット送付した。
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