本研究は,なめらかな曲面を持つ衣服の合理的な設計技術の構築を目的とする.そのために織物の賦形性(しわなく曲面を形成する能力)と衣服の曲面形成技術の関係を調べる.昨年度までは織物の賦形性の評価方法の提案となめらかな曲面を持つ衣服身頃モデルの構築を行った. 本年度は,昨年度に提案した曲面造形する際にくせとり(伸ばし、いせ込み)で操作する局所的変形を定量的に示す作業指針の構築方法の妥当性を検証した.昨年度構築した基準ボディのなめらかな曲面を持つ衣服身頃モデルを変形し,多様なサイズの衣服身頃モデルの構築を行った.基準ボディと基準衣服のモデルの水平断面間の倍率を用いて,バスト,ウエスト,ヒップをそれぞれ大小に変形した3次元衣服モデルを構築した.モデルに裁断線,布目線を与えパターンを作成した.裁断線と布目線は元のドレスのものを参考に曲面を平面で切断した線を用いた.作成したソフトウェアを用いて曲面形成に必要なせん断変形を算出し,サイズ変化時のせん断変形とパターンの仕上がり線の変化を確認した.バスト周辺と肩甲骨周辺,脇下で大きいせん断変形と仕上がり線の差が生じることが確認された.せん断変形角度と各パターンパーツの仕上がり線の差を織物を縫製時に変形させるための定量的な指示(縫製指示書)として用いた.せん断変形はくせとりにおける伸ばし,仕上がり線の差はいせ込みの指標になる.得られたパターンと縫製指示書を用いて,2種類の生地でドレスを製作した.なめらかな曲面を持つドレスを製作することができ,提案した手法の妥当性が検証できた.
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