大麦は米と混炊して麦飯として食され,近年の健康志向の高まりに伴い関心が寄せられている。本研究では,今後の大麦の利用拡充のための新規知見の蓄積を目指す研究として,麦飯の老化のメカニズムを種々の手法を用いた詳細な分析により明らかにし,さらに,大麦の老化抑制効果を活用し,大麦粉を添加したパンの老化や物性変化についても解析することとした。 米と大麦をそれぞれ単独で炊飯した米飯、麦飯、および混炊飯の3つを実験試料とし,保存は室温、冷蔵庫、冷凍庫で行い、冷蔵・冷凍は電子レンジ加熱後それぞれ室温で2時間放置した。測定項目は外観、物性、水分とし、官能評価は炊飯直後の飯及び混炊飯を基準に室温・冷蔵・冷凍保存各2時間放置について、つや・硬さ・粘り・甘味・うま味・総合評価の6項目を7段階評点法により評価した。この結果,単独炊飯では保存条件、放置時間によって硬さの増加がみられたが、混炊飯ではいずれの条件においても変化が少なかった。混炊飯では水分の低下が起こりづらく老化が抑制されるため、硬くなりにくいと考えられた。硬さの項目で物性測定と官能評価との相関は認められず、混炊飯ではもち麦の食感により保存条件による食味の変化がわかりにくかった。以上のことが明らかとなり、混炊飯は炊飯後すぐに食べることができないお弁当や給食などで有用である可能性が示された。 また,強力粉を所定の割合で大麦粉に置換したパンを調製し,外観観察、高さ、重量、物性測定、測色、官能評価を行ったところ,大麦粉置換率0.15.30%では置換率増加に伴い、高さ、重量、硬さ、付着性が増加した。最も総合評価が高かったのは置換率15%であり,もちもち感や色、香りが適度だったためと示唆された。3日保存による顕著な変化は見られなかった。 これらより,炊飯および焼成後に時間が経過した飯やパンの特性解明と活用に寄与する有用なデータを蓄積することができた。
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