研究課題/領域番号 |
16K16263
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
勝野 那嘉子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20743892)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 炊飯米表面 / 光沢 / 表面形状 |
研究実績の概要 |
炊き立ての炊飯米表面には光沢があるが,時間の経過とともに光沢は失われることが知られている。特に冷蔵保存では,澱粉の再結晶化の進行とともに急速に光沢が失われる。炊飯米の光沢変化に表面構造の変化が関与していると予想されるが,その詳細は捉えられていない。本研究では,表面構造変化を定量的に捉えることで,光沢減少および澱粉の再結晶化との関係性を明らかにすることを目的とした。 炊飯米の光沢を表面光沢度計により測定したところ,冷蔵開始から12時間までの間に顕著に減少し,その後は緩やかに減少した。SEMによる表面微細構造の観察から,保存0時間の試料では平滑であった表面が,保存時間の経過とともに表面構造が変化し,複雑化していくことが確認された。画像解析による表面構造の数値化から,冷蔵保存開始6時間から12時間の間に顕著な構造変化があることが推定された。XRD測定の結果,表面近傍において6時間から12時間の間に17°回折ピークの顕著な増強が認められた。表面近傍ではこの期間に澱粉の再結晶化が急速に進行していると示唆された。これらの結果から表面近傍の澱粉の再結晶化に従い,澱粉が凝集体を形成することで表面の凹凸が増加し,光沢が減少したと考えられる。 SEM観察においては冷蔵開始から12時間までの間の表面構造の変化が十分にとらえられなかったことから,小角X線散乱により冷蔵開始から12時間までの間の澱粉凝集挙動の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は主に2つの項目がある。1つめは,米飯冷蔵保存時の表面形状をフラクタル解析により定量的に評価することである。2つ目は,アミロース,アミロペクチンの段階的な凝集構造を数十nmから数百μm より大きなスケールまで,幅広いサイズスケールで解析し,表面形状との関係を明らかにすることである。 28年度は,冷蔵保存における表面光沢度変化の把握,表面形状変化の観察及び数値化,表面同組成モデルを用いた冷蔵保存時の凝集挙動の解析を行う計画となっていた。28年度の研究では,炊飯米表面のSEM観察と画像解析から,表面形状の変化を数値化することができ,光沢度の変化が数百nmの構造変化に起因していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究では,炊飯米表面のSEM観察と画像解析により表面形状の変化を数値化することができ,光沢度の変化が数百nmの構造変化に起因していることを明らかにした。しかしながら,表面構造と光沢度が顕著に変化した冷蔵開始から12時間の変化はとらえられなかった。このことから,表面に凹凸構造が形成される前の表面近傍の微細な澱粉凝集挙動をとらえる必要があると考えられる。そこで,29年度は,小角X線散乱を用いて,冷蔵保存時の澱粉凝集挙動を把握し,光沢度低下との関係を明らかにする。
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