研究課題/領域番号 |
16K16266
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
風見 真千子 東京農業大学, 応用生物科学部, 助手 (60761046)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 未利用資源 / 大豆 / デハイドリン / 耐熱性 / 物性改善 |
研究実績の概要 |
本研究は、未利用資源である大豆ホエーが魚介類及び肉類の物性改善効果に寄与するメカニズムを解明するため、大豆ホエー含有成分の中でも耐熱性タンパク質であるデハイドリンに焦点を絞り解析を行うものである。平成28年度は、デハイドリンの抽出・精製および組み換えタンパク質合成、得られたデハイドリンの性状解析を行うことが課題であった。 まずはじめに、大豆ホエーからデハイドリンの抽出・精製を行い、得られたデハイドリン画分をSDS-PAGE後、抗デハイドリン抗体(abcam社)を用いてウエスタンブロッティングに供したところ、26 kDaおよび31 kDaにシグナルが検出された。次に、デハイドリンの性状解析を行う目的で、100℃またはオートクレーブ処理による加熱試験を行ったところ、31 kDaのデハイドリンは非常に高い耐熱性を有していることが明らかになった。さらに、デハイドリン画分の加熱収縮抑制効果を評価したところ、予想に反し、エビに対する加熱収縮抑制効果は見られなかったが、乳酸脱水素酵素に対する凍害保護効果およびエビに対する冷凍耐性付与効果が確認された。 また、平成29年度に計画している食品中のデハイドリン局在解析において必要となるタグ付きデハイドリン組み換えタンパク質を作製するため、LC/MS/MSを用いてタンパク質同定したところ、31 kDaのシグナルがGlyma.09G185500.1という種類のデハイドリンと100%の相同性を示した。上記の大豆ホエー作製に用いた脱脂大豆粉の原料と同一品種の大豆を栽培し、根、茎、葉から抽出したmRNAを用い、Glyma.09G185500.1の塩基配列情報をもとにクローニングを行っており、現在、大量発現を試みている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
より効率良く実験を遂行するために、実験方法の一部を若干変更したが、結果的にデハイドリンの抽出・精製、性状解析を順調に遂行できている。一方で、予定には無かったデハイドリンの加熱試験を行ったため、デハイドリン組み換えタンパク質の作製は当初の予定より若干遅れ気味であるが、デハイドリンの性状をより正確に評価できたことで、今後の研究の円滑な進行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、デハイドリン組み換えタンパク質の作製を進め、当研究室のこれまでの結果からデハイドリンと相互作用をすることが推察されているいくつかの酵素を用いて、デハイドリンとの相互作用解析を行う。具体的には、デハイドリンの有無で、温度依存的にそれぞれの酵素活性に影響を与えるのか解析する。さらに、相互作用による食品への効果については、大豆ホエー浸漬前後、および加熱・冷凍前後の食品中におけるデハイドリン局在の観察を共焦点蛍光顕微鏡を用いて解析し、最終的にはデハイドリンの局在と食感との関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
デハイドリン組み換えタンパク質をもとに、抗デハイドリン抗体を外注で作製する予定であったが、市販の抗デハイドリン抗体で十分な反応性を確認することができたため、外注の必要が無くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に計画していた組み換えタンパク質の作製を引き続き行うために使用する。さらに、本研究を進める中で明らかになったデハイドリンの種類の違いによる耐熱性の違いにも着目することで、詳細な物性改善メカニズムの解明につなげる予定である。
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