さつまいもは飲み込みにくい食品の上位に入るが、調理法や品種によっては、必ずしも飲み込みにくいと感じる人ばかりではない。また、ヒトが食べ物を飲み込むまでには、口中に取り込んでから飲み込むまでに食物を咀嚼して食塊を形成するが、飲み込みにくいと感じる要因がその過程にあると推測した。そこで、咀嚼過程の食塊に着目し、さつまいもの加熱方法の違いが食べやすさへ及ぼす影響について検討を行った。 方法は、さつまいも(千葉県産紅あづま)を100±10gに切断し、オーブン加熱、蒸し加熱、電子レンジ加熱の異なる3種の方法で加熱し、比較した。加熱後の試料について、力学的測定、水分測定、官能評価および顕微鏡による組織観察を行った。食塊の採取は、2㎝角に切った試料を咀嚼し、それを5回、15回、25回、自由回(飲み込む直前)と、それぞれ容器に吐き出してもらい、食塊試料とした。食塊について、テクスチャー特性および水分含有率を測定した。 加熱後のさつまいもの硬さは有意差が認められず、水分含有率はレンジが他の試料と比較し有意に低値を示した。官能評価の結果、レンジが他の試料と比較してかたく、まとまりにくく、飲み込みにくく、残留感が多いと評価された。SEM観察により、レンジは細胞膜が強固で細胞間に空隙があるが、オーブンおよび蒸し加熱は細胞壁が崩れている様子が観察された。食塊の硬さは、咀嚼回数15回まではレンジ加熱の食塊が他の試料と比較し硬く、水分含有率は咀嚼回数25回までレンジ加熱の食塊が他の2試料と比較し低い傾向がみられた。 加熱方法により組織構造および水分含有量が異なることが、食塊の形成しやすさ、そして食べやすいと感じる要因となることが示された。
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