本研究は、「食品に含有される微量カロテノイドの詳細を明らかにすること」「調理加工が食品に含有されるカロテノイドに与える影響について解明すること」の2点を主題とし、食品に含まれるカロテノイドに関する基礎的知見の確立を目指して実施した。
最終年度の研究では、サツマイモに含有されるカロテノイドが下処理工程により受ける影響について明らかにすることを試みた。サツマイモは、皮をむいて切裁した後は変色を防ぐ目的で水に浸漬することが多く、特に0.5%前後のミョウバン水(pH 3.5~4.0)に浸漬することが推奨されている。昨年度の研究で、切裁したサツマイモを酸性水溶液に2時間浸漬すると含有カロテノイドの組成が変化し、量も減少することが明らかとなっていたが、本年度の研究で、一定濃度以上のミョウバン水に浸漬するとカロテノイドの減少が著しく軽減され、抗酸化活性も80%以上維持されることが初めて明らかとなった。
研究期間全体では、6種のサツマイモの含有カロテノイドを詳細に分析し、主に(1)既知のβ-caroteneやLutein等の他に多様なEpoxide体が存在すること、(2)加熱調理により含有カロテノイドの特定の1種が有意に減少し、4種のepoxide体が増加すること、(3)調理時の加熱手法の違いにより、カロテノイド由来の抗酸化活性強度に最大で4倍程度の差が生じること、(4)サツマイモの下処理時に日本で古来より用いられてきた手法を省略することなくミョウバン水に浸漬することで、より効率的にカロテノイドを体内に摂取し、その抗酸化能を享受できること、を明らかにすることができた。サツマイモに含有されるカロテノイドが、生の状態から私たちの体内に摂取されるまでにどのように変化していくかを一貫してここまで詳細に明らかにした例はなく、食品に含まれるカロテノイドに関する新たな知見を得られたと考えている。
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