本研究は脂溶性成分と植物油を用いて、膜透過性スクリーニングPAMPA法を用いた人工膜透過性試験により行い、脂溶性成分と植物油の相性を客観的に数値化することを目的とし、植物油中のリン脂質含有量が脂溶性成分の膜透過性に影響するか否かを検討した。先行研究において、脂溶性ビタミンの一種であるカロテノイドの吸収量は、カロテノイド単体よりも、リン脂質の存在下では向上する事が報告されている。このことはリン脂質含有量が高い植物油が脂溶性成分を効率的に吸収させるうえで有用となることを示唆している。これまでにリン脂質含有量が高い植物油としてコーン油を選定し、人工膜透過性試験(PAMPA)を用いて、リン脂質含有量が脂溶性成分ケルセチンの膜透過性に影響するか否かを検討した。しかしリン脂質含有量の違いは、ケルセチンの膜透過性に影響しなかったため、コーン油にリン脂質 (Phoshatidyl Cholin)を添加する実験系に変更し、実験を遂行した。本年度はリン脂質(Phoshatidyl Cholin)を添加したコーン油について、ガスクロマトグラフィー(GC)により脂肪酸の組成分析を行った。また熱コーン油を用いて、調理した際に脂溶性成分ケルセチンなどの成分が膜透過性にどう影響するのか、人工膜透過試験(PAMPA法)を遂行し、Caco-2細胞(ヒト結腸癌由来株化細胞)層を用い腸管における物質透過実験を再評価した。今後は本年度が最終年度にあたるため今までに得られた研究成果をとりまとめる予定である。
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