研究課題/領域番号 |
16K16270
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
黒住 千春 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (20441488)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嚥下反射 / 円背 |
研究実績の概要 |
頚部筋には,嚥下,頭頚部の姿勢保持,呼吸という3つの機能があるが,頭頚部の姿勢保持および呼吸のどちらかの機能が努力的となれば,嚥下機能が阻害される可能性がある。円背や,それに伴う上位頚部の過伸展などの不良座位姿勢が,嚥下機能を阻害していることが明らかになれば,円背を有する高齢者における嚥下障害や誤嚥性肺炎発症の早期予防を図ることができる。そこでまず,28年度は,円背による不良座位姿勢を代償するために,頚部筋の活動量が変化しているのかを検証するための実験を行った。 30名の高齢者を対象とした。被験者の座位姿勢を撮影し,円背指数を算出した。次に,後頸筋群および胸鎖乳突筋の筋硬度を測定した。またこれらの筋の1分間の平均筋活動を,表面筋電図を用いて測定した。座位および側臥位における,筋硬度と筋活動量をそれぞれ測定し,円背の有無で比較した。その結果,円背あり群における後頸筋群の座位での筋硬度は,側臥位と比較して有意に高かった(p<0.05)。一方,円背なし群ではこれらに有意な差は認めなかった。円背あり群における後頸筋群の座位での筋活動量は,側臥位と比較して有意に高かった(p<0.01)。同様に,円背なし群においても後頸筋群の座位での筋活動量は側臥位での筋活動量と比較して有意に高かった(p<0.01)。円背あり群における胸鎖乳突筋の筋硬度は,座位と側臥位で有意な差は認めなかった。しかし,円背なし群における筋硬度では,側臥位と比較して座位で有意に高かった(p<0.05)。胸鎖乳突筋の筋活動量は,どちらの群においても座位と側臥位で有意な差は認めなかった。すなわち,円背がある場合,座位姿勢を保持するために,頚部筋群の筋活動が増大していることが示唆された。 以上の研究成果は,第1回アジア太平洋作業療法シンポジウム(台湾)で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度に予定していた実験は全て実施した。また,同時に29年度に予定している実験で使用する嚥下機能評価装置の作成を行っており,28年度末に完成した。引き続き,作成した装置のテスト,調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
29年度前期は,新しく作成した嚥下機能評価装置のテスト,調整を進めていく予定である。センサーの調整や解析ソフトの設定など,引き続き改良および細かい調整が必要である。評価装置の調整ができ次第,次の課題である円背により,舌骨上筋群の筋活動量や嚥下反射時の喉頭運動距離が変化するのかについての実験を,高齢者を対象に行う予定である。並行して28年度の研究成果について論文投稿も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度,29年度に行う予定である実験に必要な設備備品費を全て28年度予算に計上していたが,28年度の実験を行った上で,備品の細かい仕様を見直す必要があると考え,29年度の購入へ先送りしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度に行う実験に必要な備品である嚥下・運動機能評価用データ収集システム(作製済み)に接続するノートパソコン,高さ調整付きの椅子などを購入予定である。
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