研究課題/領域番号 |
16K16272
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡田 恵美子 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (00766537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食事パターン / ビタミンD / サルコペニア / コホート研究 |
研究実績の概要 |
高齢化が進む先進国において、サルコペニアの予防は重要な社会的課題である。本研究は、地域在住者を対象として食事パターンに着目し、骨代謝や骨格筋に関わる血中ビタミンD濃度と食事パターンの両側面からサルコペニア予防に与える影響を明らかにするとともに、要介護状態、死亡に及ぼす影響も縦断的に検討することを目的とする。 平成28年度は、超高速液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)により、平成27年にベースライン調査を実施したコホート研究(DOSANCO Health Study)において採取した549検体の血清中の25-ヒドロキシビタミンDを測定した。25-ヒドロキシビタミンDの測定法は既に確立しており、LC-MS/MSを用いることで安定かつ高感度に分析を実施することができ、平成28年度内に全検体の測定を終了した。 対象者549名(35-74歳、男性247名、女性302名)の血清中25-ヒドロキシビタミンD濃度は、中央値23.1ng/mL(範囲:最小値2.08ng/mL-最大値78.8ng/mL)だった。血清中25-ヒドロキシビタミンD濃度の平均値を属性別に検討したところ、65歳未満22.7ng/mL・65歳以上24.9ng/mL、男性24.8ng/mL・女性22.5ng/mL、非喫煙者22.1ng/m・過去喫煙者25.4ng/mL・喫煙者23.8ng/mL、非飲酒者22.8ng/mL・過去飲酒者22.9ng/mL・週1回未満の飲酒者21.5ng/mL・週1回以上の飲酒者25.7ng/mL、日光曝露2.5時間/日未満22.1ng/mL・日光曝露2.5時間/日未以上25.1ng/mLであり、男性、年齢が高い者、過去に喫煙していた者、現在飲酒している者、日光曝露の時間が長い者で濃度が高かった。 さらに、DOSANCO Health Studyで血液検体と同時に測定した各種データ(食品摂取量、体組成、握力、重心動揺)をデータベースに突合し、利用可能な形に整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清中の25-ヒドロキシビタミンDの測定に関して、当初の計画以上に進展しており、既に全検体の549検体の測定が終了した。LC-MS/MSを用い、25-ヒドロキシビタミンDを安定かつ高感度に分析を実施することができた。データベースの整備に時間を要したが、曝露要因である食事パターンならびにアウトカムであるサルコペニアとの関連に関するデータ解析は平成29年度に実施できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象者の参加登録以降の死亡・転出・要介護認定を自治体及び対象地区の医療機関と共同して1年間追跡する。 簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)で推定した食品摂取重量から残差法によるエネルギー摂取量の調整を行い、因子分析を用いて食事パターンを同定する。European Working Group on Sarcopenia in Older People が推奨する診断基準に基づいて、筋肉量、握力、立位バランスからサルコペニアを評価する。統計解析として、説明変数は食事パターンと血中ビタミンD濃度、目的変数はサルコぺニア発症の有無とし、重回帰分析またはロジスティック回帰分析を行い、オッズ比及び95%信頼区間を算出する。交絡要因は、性別、年齢、BMI、喫煙習慣、運動習慣等が考えられ、これらを共変量として投入して調整を行う。また、筋肉量、握力、立位バランスへの影響についても個別の解析を実施し、サルコペニア発症の前段階を含めたリスク評価を行う。さらに、追跡調査で得られた要介護状態や死亡に与える影響も縦断的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
25-ヒドロキシビタミンDの測定をより迅速にするため、平成28年度に研究補助員雇用の人件費を計上していたが、当初の計画以上に進展したことから、一部の経費が次年度へ繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、調査対象地区における追跡調査ならびに研究打ち合わせを密に行う。また、研究成果を学会発表及び英文学術雑誌へ投稿することにより、研究成果を広く発信することを計画している。
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