研究課題/領域番号 |
16K16275
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石島 智子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80568270)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マグネシウム欠乏食 / 栄養素代謝 / ラット |
研究実績の概要 |
本研究では、現在の日本人のマグネシウム(Mg)摂取不足状況および今後起こりうるMg摂取不足状況を想定したMg欠乏食をラットに投与し、その摂取状況下で引き起こされる生体への影響、特に栄養素代謝について明らかにする。 平成28年度は、充足率20%を想定したMg欠乏食投与による影響について生化学的解析を行った。飼料はAIN-93G飼料組成に基づき作製し、正常食のMg濃度0.05%を推奨量(充率100%)と仮定し、Mg欠乏食は、充足率20%の飼料中Mg濃度0.01%に設定した。 3週齢のWistar系雄ラットを正常食で1週間予備飼育後3群に分け、正常食を自由摂取させる正常食群、Mg欠乏食を自由摂食させるMg欠乏食群、Mg欠乏食群と等量の正常食を投与するペアフィーディング群とし2週間本飼育を行った。 飼料摂取量は正常食群に比べMg欠乏食群において5%の有意な低下を示した。そのため体重増加量は、正常食群に比べMg欠乏食群で有意に低下したが、摂食量が等しいペアフィーディング群との間に差は見られず、摂取Mg量が異なることによる成長への影響はみられなかった。正常食群・ペアフィーディング群に対し、Mg欠乏食群では血清中Mg濃度の有意な低下が引き起こされた。またMg欠乏食群では血清中のカルシウム濃度が有意に上昇し、リン濃度はペアフィーディング群に対し有意な低下を示した。これら血清中ミネラルの変動は、重度Mg欠乏食投与と同様な変動を示した。脂質代謝に関連する項目として、血清中LDLコレステロール濃度とリン脂質濃度がペアフィーディング群に対しMg欠乏食群において有意な上昇を示した。たんぱく質代謝および腎機能に関連する項目として、ペアフィーディング群に対しMg欠乏食群において血清中アルブミン濃度の有意な低下、血清中尿素窒素の有意な上昇がられた。これらの変動も重度Mg欠乏食投与と同様であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、現在の日本人のMg摂取量の推奨量に対する充足率約70%を想定した0.04%Mg食、その半量の0.02%Mg食(充足率40%)、さらにその半量の0.01%Mg食(充足率20%)を設定して栄養素代謝の変動について解析する。 本年度は、上記3つの条件における生化学的解析を行う予定であったが、充足率20%の飼料中Mg濃度0.01%についての生化学的な解析しか行えなかった。充足率40%の飼料中Mg濃度0.02%、充足率約70%の飼料中Mg濃度0.04%については、飼料摂取量の低下が引き起こされず、一度の飼育で2条件行うことが可能であると思われるので、今後早急に行い生化学的解析のデータを揃えていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
進行が遅れている充足率40%と約70%のMg食による動物実験を取り急ぎ行う。これらの生化学的解析が終了したところで、3条件の結果を並べ、各濃度のMg欠乏食投与によって引き起こされる代謝変化が異なってくるポイントを見出す。そのポイントにおいて、Mg欠乏食投与によりどのような変化が引き起こされているのかについてDNAマイクロアレイを用いた遺伝子レベルでの網羅的な解析を行う。
|