研究課題
GIPは食事摂取によって分泌され、膵β細胞上のGIP受容体(GIPR)に作用してインスリン分泌を促進する。一方、GIPRは膵β細胞だけでなく脂肪組織にも存在する。しかし生体内でGIPの両作用を区別して評価することは困難なため、脂肪組織に発現するGIPRのin vivoでの役割は明らかでない。我々は脂肪組織特異的GIPR欠損マウス(GIPRfat-/-)を作製し、脂肪組織におけるGIPシグナルの肥満誘導やインスリン抵抗性形成への関与について検討した。高脂肪食負荷時の表現型解析の結果、GIPRfat-/-の体重はWTに比較して軽度ではあるが有意に低下し、インスリン感受性は著明に上昇した。GIPRfat-/-の脂肪量や脂肪径はWTと比較して有意な差は認めなかったが、脂肪肝は著明に改善した。そこでWTとGIPRfat-/-の脂肪組織を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、GIPRfat-/-でIL-6の遺伝子発現が低いことが判明した。脂肪組織のIL-6 発現および血中IL-6濃度は、WTに比較してGIPRfat-/-で有意に低下していた。また、脂肪細胞腫瘍株である3T3-L1にGIPを添加したところ、GIP非添加群に比較して細胞内IL-6発現と培養液中のIL-6濃度が増加した。そして、IL-6受容体の下流シグナルでインスリン感受性に関与するSOCS3の遺伝子発現を評価したところ、GIPRfat-/-の脂肪組織と肝臓で有意に低下していた。SOCS3によって活性化されるSREBP-1c発現は、GIPRfat-/-の肝臓で有意に低下していた。よって、脂肪組織のGIPシグナルはIL-6の分泌を介して脂肪肝やインスリン抵抗性を形成することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
GIPRを脂肪特異的に欠損させることで現れた表現型(インスリン抵抗性や脂肪肝の改善)と、脂肪細胞のGIP シグナルによって直接的に調節される分子の同定・関連づけが順調に進んでいるため。
これまでに明らかにしてきたIL-6を介するGIPの作用について、3T3-L1細胞だけでなくプライマリーカルチャーを用いて解析を行う。また、IL-6だけでなく、マイクロアレイの結果から得た脂肪細胞におけるGIPRの働きに関わる他の候補因子の解析も行う。
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