研究実績の概要 |
これまでに、脂肪組織特異的GIPR欠損マウス(GIPRfat-/-)の表現型解析の結果、高脂肪食負荷下のGIPRfat-/-は野生型マウスに比較して脂肪量や脂肪形態に差を認めないが、インスリン感受性が良く、脂肪肝進行が著明に抑制されることが明らかとなった。また、脂肪組織のマイクロアレイ解析や血中IL-6濃度の結果から、その機序にIL-6シグナルが関与する可能性が考えられた。そこで本年度は、脂肪細胞のGIP シグナルによって直接的に調節される分子としてIL-6に着目し、表現型とメカニズムの更なる解析を進めた。 高脂肪食負荷下のGIPRfat-/-は野生型マウスに比較して脂肪細胞のIL-6 mRNA発現及び血中IL-6濃度の上昇が有意に抑制されていたが、脂肪細胞TNF, MCP1, IL-1β mRNA発現や血中アディポネクチン、レプチン濃度に差はなかった。GIPは脂肪細胞においてCREBのリン酸化を誘導すること、またそのCREBは星状膠細胞においてTNF誘導性のIL-6 mRNA発現を増幅することが報告されている。そこで、脂肪細胞腫瘍株(3T3-L1)にTNF存在下でGIPを添加し、24時間後のIL-6 mRNAレベル及び培養上清のIL-6レベルを測定したところ、GIP非添加群に比べてTNF誘導性のIL-6発現を有意に増幅しており、GIP添加群と非添加群のIL-6発現レベルの差は、TNF非存在下に比べて著明に増大していた。このことから、肥満に伴う慢性軽度の炎症時にGIPの刺激を介したIL-6分泌増強が深くかかわることが示唆された。現在、GIPRfat-/-から単離した初代培養細胞(脂肪組織由来間質細胞や胎児線維芽細胞)を脂肪細胞に分化誘導し解析を行えるよう準備を進めている。
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