侵襲期の重症患者はエネルギー消費量が多く、タンパク異化が亢進している。ホエーペプチドは、乳清ペプチドともいわれ、これまでの栄養剤のタンパク質の主成分と比較して、消化吸収能に優れているだけでなく、分岐鎖アミノ酸が多いこと、インクレチン分泌作用がありインスリン抵抗性の改善に有用であるなどの特徴が知られている。申請者らはこれまでICUにおける重症患者においてホエーペプチドの有用性について検討を重ねてきた。そこで本研究では、今年度、術後1日目より1週間、ホエーペプチドあるいはカゼインペプチドをベースとした栄養剤を使用し、手術前、術後、術後1日目、3日目、7日目、14日目、(退院時)の筋肉量、タンパク異化状態、インスリン抵抗性、及び治療アウトカムを評価した。 本研究では、経腸栄養管理患者においては、手術当日または翌日の飲食許可後よりホエーペプチドベース栄養剤群とカゼインベース栄養剤群にランダムに分け、個々の患者に適切な投与量を算出して投与を開始。また、通常食を摂取できる患者に対しては、経口摂取可能な栄養補助食品としての栄養剤をホエーペプチドベース栄養剤摂取群、カゼインベース栄養剤摂取群にランダムに分けて一日400kcal食事に追加して摂取した。 患者の栄養評価、血液・生化学検査、尿検査など基礎的データ、筋力及び筋量の測定は、術後1日目より1週間、ホエーペプチドあるいはカゼインペプチドをベースとした栄養剤を使用し、筋肉量、タンパク異化状態、インスリン抵抗性、及び治療アウトカムを評価した。その結果、タンパク異化抑制に効果が期待されるホエーペプチドを栄養管理に使用することで、術後患者においてタンパク異化を抑制する目的で積極的な栄養介入し、術後のアウトカムの改善につながる可能性が示唆された。
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