研究課題
低亜鉛血症は大腸がん発症のリスクとされているが、その分子機序は明らかでない。大腸がんの発症には慢性的な腸管炎症が関与する。申請者は、マクロファージにおいて、細胞内亜鉛濃度の変化に伴い、インターフェロン応答型転写因子であるIRF5の細胞内局在が変化することを見出した。しかし、腸管炎症や大腸発がん過程におけるIRF5の機能に関しては不明である。よって本申請課題は、亜鉛もしくは亜鉛欠乏状態がMphの諸機能(炎症応答や貪食能など)に及ぼす影響について、その効果におけるIRF5の関与を明らかにすることを目的とした。平成29年度は亜鉛欠乏ならびにそれに付随したIRF5の機能的変化が腸管炎症に及ぼす影響に関して、マクロファージの機能を中心にマウスを用いたin vivo解析を実施した。項目は下記の2点である。①亜鉛欠乏が腸管炎症に及ぼす影響亜鉛キレート剤を腹腔内に投与することで亜鉛欠乏状態したマウスを用いてトリニトロベンゼンスルホン酸誘発大腸炎モデルを作成した。炎症の程度を比較したところ、亜鉛欠乏に伴い大腸炎が増悪することが判明した。またその背景には、Ly6C陽性の炎症型マクロファージの増加ならびに、炎症性サイトカインであるIL17を放出する17型ヘルパーT細胞が活性化が生じていることを見出した。②亜鉛欠乏マクロファージがリンパ球の分化に及ぼす影響上記①より、「亜鉛欠乏→炎症型マクロファージの増加→17型ヘルパーT細胞の増加→大腸炎増悪」というシナリオが考えられる。そこで、マウス骨髄細胞からの分化誘導により得られたマウス骨髄由来マクロファージ(mBMDM)を用いて、リンパ球との共培養実験を実施した。その結果、亜鉛キレート剤を用いて亜鉛欠乏状態としたmBMDMではIL23の発現が亢進しており、その結果としてリンパ球からのIL17の産生が増加することを見出した。
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