本研究は,東日本大震災の避難所生活における食料供給の実態調査をもとに,近い将来発生する可能性のある大規模災害に備え,発災後の避難所生活における栄養管理の指標の提言を行った。 平成28年度では,東日本大震災の食事画像分析から,避難所生活における食料供給の実態調査を行った。本研究の独創的な点は被災地の食事画像を分析する調査方法で,これにより発災直後から避難所閉鎖まで長期に渡り,経時的に食料供給の実態を調査・分析するこが可能となり,エネルギー及び栄養素の供給量が基準値に達した時期を継時的に明らかにした。 平成29年度では,エネルギー及び栄養素の供給量の過不足の期間を明らかにした。これをもとに避難所生活における栄養管理の視点からフェーズ区分を行った結果,7フェーズに区分することができた。不足しがちな栄養素を補給し,健康を維持するために活用すると良い食品を管理栄養士の視点からフェーズごとに提案を行った。賞味期限が短く長期保存できない食品は備蓄することが出来ないため,発災後,行政と管理栄養士等が連携して食品を調達する必要がある。しかし,避難所には冷蔵庫がないことが予測されるため,常温保存できる食品の提案を行った。また今回は,一般の方(食事制限など特別な配慮が必要な方を除く)を対象とした食品の提案であり,食事制限が必要な方への提案ではない。そのため,今後の課題として,食事制限が必要な方に対して,疾患別の食品及び供給方法等,具体的な栄養管理について検討する必要がある。 東日本大震災は、阪神淡路大震災や中越地震とは異なり、地震だけでなく津波を伴う災害で,広域にかつ甚大な被害をもたらした大規模震災であった。その東日本大震災を調査・分析して得られた結果をもとに提案した栄養管理の指標は,今後、津波を伴う大規模災害(南海トラフ巨大地震や首都直下地震など)においても、十分に活用できることが示唆された。
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