研究課題
本研究は、遺伝子変異酵母株YNS17の生育回復活性を指標とする薬剤スクリーニング系を用いて得られた天然資源由来の機能性物質の研究である。特に、セリ科の食材に含まれるポリアセチレン化合物falcarindiol類の抗2型糖尿病作用とその標的分子を明らかにすることを目的とした。最終年度は、ラット肝臓由来細胞株H4IIEにおけるfalcarindiolの糖新生抑制作用の標的分子を同定するために、falcarindiolと各種阻害剤の作用を解析し、その作用特性を比較した。Falcarindiolと各種GSK-3β阻害剤またはAMPK活性化剤をH4IIE細胞に処理し、各種シグナル伝達分子のリン酸化レベルを解析した結果、falcarindiol処理群では、GSK-3β不活性化、AMPK活性化、p70S6K活性化がみられた。同条件下でのGSK-3β阻害剤TDZD-8の作用は、GSK-3β不活性化、AMPK活性化、p70S6K活性化がみられた。AMPK活性化剤のAICAR処理群では、AMPK活性化がみられたが、p70S6Kに変化がみられなかった。また、mTORC1阻害剤rapamycinとfalcarindiolとを共処理すると、falcarindiolの糖新生抑制作用が打ち消されることが示唆された。以上の結果から、H4IIE細胞におけるfalcarindiolの標的分子はGSK-3βである可能性が得られ、GSK-3β不活性化とAMPK活性化により糖新生を抑制することが示唆された。また、これらの作用機序にはオートファジー制御因子mTORC1の活性が関わる可能性が得られた。これまでの結果から、falcarindiolはインスリンと異なる作用機序で糖新生を抑制することが示唆された。また、セリ科の食材はインスリン活性を増強するような食品機能性物質への応用が期待できる重要な知見が得られた。
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