研究課題/領域番号 |
16K16288
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
伊藤 早苗 女子栄養大学, 栄養学部, 助教 (50610846)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リン / 子ども / 食品添加物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一に、日本人の子どもが実際に摂取しているリン量を明らかにすることである。その上で、そのうちの食品添加物由来のリン量を明らかにし、また、家庭の経済状況による食品添加物由来のリン摂取量の違いを検討することを目的としている。 具体的内容は以下の通りである。申請者らは、平成25年度に全国4県の公立小学校19校に在籍する小学校5年生約1500名に対して、食事記録法および写真記録法の併用により平日2日および休日2日、計4日間の食事調査を行った。また、その保護者に対して世帯年収に関するアンケート調査を実施した。本研究では、このうち、C県で得られた食事調査の結果より、学校給食のない休日2日分の食事を、対象者の記録を元に再現する。再現した食事について、① 食品毎にその重量を計量し、日本食品標準成分表2015を用いてエネルギーおよびリン等栄養素摂取量を算出する。② 料理毎のリンおよびカルシウム含有量について直接分析を依頼し、1日分の摂取量を算出する。①と②の差を求め、一般的な食事調査法である、①の算出方法で過小に評価されるリン摂取量を、食品添加物由来のリン摂取量とみなし、算出する。さらに、③ この食品添加物由来の推定リン摂取量と家庭の経済状況とに関連があるのか否かを検討する。平成28年度中に、再現する食事をほぼ決定した。平成29年中に食事の再現および分析を行う予定である。 本研究は、リン摂取量と健康の関係の解明を可能にするという大きな意義がある。健康格差に対する施策や、加工食品中のリン量の明記など、国民の健康の維持と増進に向けた様々な提起の契機となり得るものである。日本人の子どもが加工食品から摂取しているリン量や、子どもが置かれた環境により健康状態が左右される可能性があることを明らかにすることは、今後の健康施策を考える貴重なデータとなると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の予定では、平成28年度中に再現する食事を決定し、その一部を実際に再現およびリン等栄養素含有量の直接分析の依頼行う予定であった。しかし、再現する食事の決定に予想よりも時間がかかり、実際の再現および直接分析の依頼に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で対象とした小学5年生のデータより、平成24年度国民生活基礎調査から推計された貧困基準を参考に、低収入群と低収入以外群に分類し、食生活に関するアンケート結果を検討したところ、低収入群は、肉や魚の加工品やインスタント麺の摂取頻度が高いという結果が既に報告された(硲野ら,世帯の経済状況と子どもの食生活との関連に関する研究,栄養学雑誌75(1); 19-28,2017)。本研究では、この結果をもとに、肉や魚の加工品およびインスタント麺に着目し、これらが出現した食事記録を中心に解析対象として抽出している。また、料理の特性により、過小に評価されるリン摂取量の違いを明らかにするため、食事を1日毎ではなく、料理毎に直接分析を依頼する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の予定では、平成28年度中に再現する食事を決定し、その一部を実際に再現およびリン等栄養素含有量の直接分析の依頼行う予定であった。しかし、再現する食事の決定に予想よりも時間がかかり、実際の再現および直接分析の依頼に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に行う予定であった食事の再現費用および分析依頼費用分を平成29年度分と合わせ、食事の再現費用および分析依頼費用として使用する予定である。
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