研究実績の概要 |
生活習慣病には食生活をはじめとした生活習慣の“量”と“質”の変化が関わるだけでなく、それらの“タイミング(時間的要因)”も影響している可能性がある。しかしながら、朝食をはじめとした食生活の時間的要因が体内時計の位相調節を介して、心身症状へ及ぼす影響については明らかでない。そこで、本研究は心身の健康に対して時間栄養学が果たす役割を検証することとした。平成28年度は関東近郊の大学に属する学生44名を対象とした断面研究を実施した。対象者には1週間にわたって腕時計型のアクティグラフ、加速度歩数計、小型の温度ロガーの装着を依頼した。さらに、習慣的な食生活状況と心身の健康に関する総合的な質問票(DHQ, DEBQ, IPAQ, PSQI, MEQ, CES-D, Chalder fatigue scale, 自覚症しらべ)への回答を依頼した。なお、期間中は食事・睡眠日誌を携帯させ、毎日の記録を依頼した。時計遺伝子多型(ClockおよびPeriod3)を評価するため、唾液採取も依頼した。解析では、1週間の睡眠-覚醒リズムの位相を特定し、平日と休日の位相差を算出した。その結果、睡眠-覚醒リズムの位相差が大きいことは、菓子類摂取量が多く、食事の質を示す食事バランススコアが低いといった関連を示した。現在は7日間の食事記録の栄養価計算をはじめ、得られたデータの全ての処理を進めており、今後、重回帰分析やロジスティック回帰分析を用いて、食生活の時間的要因と睡眠-覚醒リズムの位相差および心身の健康との関連について、遺伝的要因も含めて検討を進める予定である。
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