研究実績の概要 |
免疫機能は加齢により特徴的な変化(獲得免疫機能の低下、自己抗原に対する反応性及び炎症素因の増大等)を示す。この中で特に炎症素因の増大はアレルギー炎症の増悪や、感染症やがん等の高齢期に増加する疾患の発症や病態形成に影響する。 本研究では母マウスに妊娠前から授乳期まで高脂肪食(HF)を摂取させることで食餌誘導性肥満を誘導し、出生した仔マウスの免疫・アレルギーの炎症病態に及ぼす影響について、病態モデルマウスを用いて解析した。 その結果、仔マウスを17カ月齢まで経時観察したところ、母マウスの食餌誘導性肥満の影響により加齢によると考えられる体重減少が早期に生じた。体組成は骨格筋量(腓腹筋)には影響を与えず、脂肪組織量(内臓、皮下、肩甲骨下褐色)は有意に低値であった。免疫機能において、脾臓細胞中の加齢関連T細胞:PD-1陽性メモリーフェノタイプ(MP)T細胞比率は増加、NKT細胞比率は低下を示した。一方で、抗原特異的抗体価(抗OVA-IgG, IgE)への影響は認められなかった。また仔マウスにも食餌誘導性肥満を誘導すると、肝臓の組織学的観察から脂肪肝炎(炎症細胞浸潤、線維化)が高度に生じていた。 以上のことから、母マウスの食餌誘導性肥満は仔マウスの脂肪組織及び免疫機能の加齢変化を促進することが示された。またこれらの加齢変化が相互に作用し、肝臓組織において非アルコール性脂肪肝疾患の病態を悪化させることが示唆された。すなわち、仔の炎症病態の予防・改善に胎生期、生後早期からの環境調節が有効である可能性が示唆された。
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