研究課題/領域番号 |
16K16296
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研究機関 | 千葉県立保健医療大学 |
研究代表者 |
谷内 洋子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (30642821)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 妊娠糖尿病 / 低出生体重児 / 若年女性のやせ / 食生活 / 食習慣 |
研究実績の概要 |
少子化が国全体の社会問題となっている今、その要因として女性の晩婚化、晩産化が指摘されている。35歳以上で出産する高齢出産は、すべての初産の約1割を占め、40歳以上の分娩も年間2万例を超えているが、医療技術の向上に伴い高年齢の妊婦が安全に出産する可能性が向上した現在においても、母体の高年齢は未だ妊娠糖尿病(以下GDM)をはじめとする妊娠合併症、低出生体重児(以下LBWI)および異常分娩の頻度を増加させるリスク因子である。 GDM、LBWIは、将来的に母児ともに生活習慣病発症リスクが高まる可能性が示唆されていることから、科学的根拠に基づいた対策を講じるべく、平成29年度は、妊産婦における栄養摂取状況および栄養状態とGDM、LBWI、産後の抑うつ状態を中心とした母児の心身の健康に及ぼす影響について検討を行った。得られた成果については、日本栄養・食糧学会、日本栄養改善学会、日本臨床栄養学会等の関連学会において口頭発表を行い、活発な議論を繰り広げた。現在、妊娠初期におけるGDMのスクリーニング指標の検討について研究成果をまとめ、国際誌掲載をめざし英文論文を執筆中で、投稿準備に入っている。 また、昨年度からの検討で得られた、妊娠中のエネルギー摂取量に占める炭水化物摂取割合と耐糖能異常発症リスクとの関連についての研究成果(Carbohydrate intake during early pregnancy is inversely associated with abnormal glucose challenge test results in Japanese pregnant women. Diabetes Metab Res Rev. 2017 ;33(6))は、妊娠・出産を控えた若年男女を対象とした教育イベント(日本マタニティフィットネス協会主催:マタニティ・ベビーフェスタ)の特別教育講演等を通して、社会にフィードバックし、その成果を社会に役立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度から取り組んできた、妊産婦における栄養摂取状況および栄養状態と母児の心身の健康に関する検討では、平成28年度までは栄養素等摂取状況を中心に栄養と母児の健康障害との関連について解析してきたが、平成29年度においては、栄養素摂取状況のみならず、さらに細分化した食品摂取量を算出し、各食品群別摂取量と母児の健康障害との関連について解析を進めることができた。その結果、食習慣の質(菓子類摂取量)とLBWI出産リスクとの関連について見出し、菓子類摂取エネルギー比率が高い群では、野菜類、魚介類、肉類のエネルギー比率が有意に低く、多変量解析の結果、LBWI出産リスクと関連があることが示唆された。このことから、母体の間食を含めた食習慣は、母児の健康や栄養状態に及ぼす影響が懸念され、若年期からの望ましい食習慣の確立および食環境の整備が急務と考える。これらの成果は、平成30年度の日本臨床栄養学会にて発表予定であり、論文化も並行して進めているところである。 また、平成28年度から現在までに得られた研究成果を基に、「日本人若年女性・妊婦における痩せすぎとその弊害」というテーマで、平成30年度には関連学会(日本臨床栄養学会総会)でシンポジストとして発表・講演する予定であり、研究成果を社会にフィードバックできる機会をすでに得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に見出した、食習慣の質(菓子類摂取量)とLBWI出産リスクとの関連については、すでに学会発表を予定しているが、同時に論文執筆に取り組み、国際誌への掲載をめざす。また、妊娠中のエネルギー産生栄養素バランスと母児の心身の健康(LBWI出産や産後の抑うつ症状)との関連について検討を進める。現在、すでにデータベース作成は完了しており、これからその関連について多変量解析に入るところである。得られた結果は、学会発表、論文化を通して、これまでどおり、一般の方々へフィードバックする予定である。 また、食事および運動をはじめとする生活習慣がGDM発症予防およびLBWI出産率抑制に果たし得る役割について明らかにするとともに、日本人に適した具体的な望ましい食事や運動の在り方に関するエビデンスを確立する。平成30年度は、最終年度にあたることから、これまで得られたエビデンスを集大成し、研究成果の統合を行い、国民、メディア、官公庁、研究者が活用できる、既存エビデンスも包含した、妊娠合併症軽減のための生活習慣改善エビデンスのデータベースの作成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度の出産後女性の栄養と健康状態に関する調査にて、母児の身体組成評価を目的に体組成計を購入予定であったが、研究協力者であるクリニックにおいて、研究にて使用予定であった機器と同等の(類似した)型が既に設置されていたことから、既存の機器を使用して測定を行ったため、費用が抑えられた。そのため、次年度使用額が生じたと考えられる。 (使用計画) 平成28年度、29年度の調査から得られたデータ蓄積されつつあり、迅速な調査完了と結果の解釈を促進するため、データベース入力作業の人件費や、解析ソフトのアップグレード量に充て賄う予定である。
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