本研究では、発酵食品の健康機能の機構をアミノ酸代謝物に着目して解明することを目的とし、新規米発酵食材の開発を同時に進めている。 平成29年度は、これまで(29年度以前)に用いていた菌種以外に、醤油コウジカビであるAs.sojae、焼酎コウジカビであるAs. awamori、紅コウジカビであるMo. pilosusの米発酵物を調製し、それらの還元当量、アミノ酸含量、ポリフェノール含量および抗酸化活性を測定した。還元当量に関してはMo. pilosusで最も高く、現在市販されている米麹に用いられているAs. oryzaeに比べても高い値を示した。また、アミノ酸含量に関しては、As. sojaeで高い値を示した。ポリフェノール含量はAs. sojae>Mo. pilosus>As. awamoriの順に高かった。抗酸化活性に関しては、Mo. pilosus>As. sojae>As. awamoriの順であった。 マウスを用いた抗肥満作用の検討では、Mu.circinelloidesを用いた発酵物において高い活性があることが分かった。この評価系では過去に抗肥満作用が報告されているAs.oryzaeにおいて活性は見られなかった。よって、Mu.circinelloides発酵物にはAs. ory発酵物には含まれない抗肥満作用成分があることが示唆された。 今後は、各米発酵物に含まれる抗酸化活性成分を同定し、アミノ酸代謝物との関連性について考察を行う。また、Mu.circinelloides発酵物に含まれる抗肥満作用成分の探索を培養細胞系およびマウスを用いた実験により行う。本実験についても、アミノ酸代謝物との関連性についての考察を行う。また、本成分の機能性成分としての可能性についても検討する。
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