近年,米の消費量の低下が顕著となり,米の用途拡大が求められている。本研究では,新規米麹の開発を目的とし,アジアのさまざまな糖化微生物を用いて調製した米発酵物の成分分析および機能性調査を行った。本年度は,これまでに用いてきた8種類の微生物以外に5 種類の糖化微生物による結果を加え,成分分析および機能性評価の結果についてまとめ,用いる微生物種による成分変化の差異や生理活性の有無を調べることにより,各米発酵物の実用性を検討した。成分分析においては,糖化微生物種の近縁性によって糖化能やアミノ酸生成能に相関が見られるかに着目したが,一定の傾向はあるものの例外も存在していることから,一概に法則性があるという結論には至らなかった。機能性評価の一つとして測定したDPPHラジカル活性では,試験した13種の微生物の酢酸エチル抽出物のなかでAs. awamoriに最も強い活性が見出された。また、As. oryzaeの3 種で活性が大きく異なり、総ポリフェノール含量と相関することが示された。脂肪分解活性測定においては,M. pilosus,R. oligosporus およびS. fibrigeraのメタノール画分および水画分に活性が見出された。本結果から,これらの微生物による米の発酵によって,水溶性の脂肪分解活性物質が生成されていることが明らかになった。発酵により生成される物質として知られるアミン化合物の脂肪分解活性を測定したところ,オクトパミンに高い活性が見出されたため,現在,活性物質の探索をアミン化合物に着目して行っている。
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